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教員の研究成果

研究実績豊かな教員による集団的な指導

最先端のバイオ研究をテーマにした教育と研究

本学の教育・研究は、国立大学や民間企業での研究実績が豊かな教員と、新進気鋭の若手教員が、集団的に指導する体制になっています。単科大学であることの利点を生かした共同研究も活発で、研究活動にも意欲的に取り組み、毎年多くの研究成果をあげています。

「分子生物学・遺伝学」の論文引用度指数は全国1位

世界的に注目される研究をどれだけ発表しているかを知る目安として、世界最大級の学術情報文献のデータベースを構築しているトムソン・ロイターによる引用度指数があります。「分子生物学・遺伝学」の研究分野で、本学教員の論文が引用された指数(2004〜8年)は全国1位です。また、世界的な科学研究誌への掲載論文も、『ネイチャー』が32位、『サイエンス』が26位(朝日新聞出版「大学ランキング」調べ)と上位にランクされています。
こうした教員による活発な研究活動は、学生たちにとって、最新のバイオ研究の成果を学ぶ機会になっています。

本学教員による最近の意欲的な研究成果

高等植物における環境ストレス応答分子機構の解析

今村 綾先生(遺伝子生命科学コース)

大腸菌や酵母といったひとつの細胞単位で存在している生物が使っている「His-Aspリン酸リレー系分子ネットワーク」という情報伝達の仕組みを、高等植物も持っていることは明らかになっています。とくに、シロイヌナズナの情報伝達制御因子は22種類あることが解明され、このうちいくつかは植物ホルモンのサイトカイニン情報伝達に関与していると示唆されています。
これは、移動手段がない植物の"種を保存するための巧みな環境変化への対応手段"が進化的にどのように発展してきたのかを研究しているものでもあり、このシロイヌナズナに加えイネの情報伝達の仕組みを研究し、イネにおけるこの分子ネットワークの特異性があることを明らかにしつつあります。
この独自の情報伝達系を調べていくことで、環境変化に強いイネの品種改良などへの応用が考えられます。

水道水に含まれる有害な物質を分解する酵素をデザイン

中村 卓先生(分子生命科学コース)

水道水の中には、塩素消毒の副産物として遺伝子を傷つけるような有害な物質が含まれていることがあります。このような有害な物質を効率よく分解できる酵素というタンパク質をコンピュータシミュレーションと実験によりデザインして作り出す研究に取り組んでいます。
酵素は通常37度くらいの常温でよく働くものですが、深海の熱水噴出口の周辺などで発見された超好熱菌と呼ばれる極限環境微生物のもつ酵素が、80度くらいの高温でも非常によく働くことが判明しました。こうした熱に強い酵素は加工が容易で産業に利用しやすいとうメリットがあり、研究対象として特に注目しています。
改良した酵素は、残留性の農薬やダイオキシンなど有害な物質を分解し、環境浄化に役立つ可能性があります。現在はその足がかりをつくる研究の段階で、改良酵素を効率よく作りだすためのシミュレーションや実験の方法についていろいろと検討しているところです。

酸化ストレス誘導性細胞死とミトコンドリアの関係に迫る

小宮 徹先生(細胞生命科学コース)

ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを産生したり必要な物質を合成するなど、細胞が生きていくためにはなくてはならない「細胞小器官」ですが、最近の数多くの研究から、細胞が死ぬときにも重要な役割を果たしていることが判明しました。
細胞が自ら死ぬ「アポトーシス」は、何らかのダメージを受けたときだけでなく、発生や分化の過程で生じる余分な細胞を取り除く時にも起こります。したがって、ミトコンドリアの機能の破たんは、エネルギーの代謝や細胞増殖系の異常を引き起こし、糖尿病やガン、神経変異性疾患などの原因になるとも言われています。
この細胞死とミトコンドリアの関係を解析した結果、細胞死を抑制する「P5」という新しいタンパク質を見出しました。現在は、その抑制の仕組みを研究しており、将来的には創薬の開発に発展することが期待されます。

長浜とも縁の深い「サイカチ」から有用な物質を発見

太田 伸二先生(環境生命科学コース)

植物に含まれる有用成分(新規生理活性物質)を探しだし、その機能を解明する研究をしていますが、現在は長浜市ともゆかりの深い、「サイカチ」の有用成分の解明に取り組んでいます。
ここ長浜には、約1400年前に聖徳太子が当地を巡って来られた折りに、病を罹った人々のために薬の木とされていたサイカチを植えられたという言い伝えがあり、大学前に広がる琵琶湖の浜辺は、この木が多く植えられていたことから「さいかち浜」と呼ばれるようになったと言われています。
このサイカチの種から有用物質である新しいアルカロイドを発見し、先生が、この物質を「サイカチノシドA」と命名し、速報論文として報告しました。アルカロイドと言ってもトリカブトのような強い毒性はなく、どのような機能があるのかを現在解明中です。取り出した有効成分をもとにして、サイカチゆかりの長浜での医薬品開発に役立てようとしています。

『ネイチャー・セルバイオロジー(電子版)』に論文掲載

山本 章嗣先生(アニマルバイオサイエンス学科)

細胞内の不用なタンパク質や病原菌を分解し、生命の維持に重要な役割を果たす「オートファジー(自食作用)」の機構を解明した研究論文が、英科学誌『ネイチャー・セルバイオロジー(電子版) 』(11/8付)に掲載されました。
この論文は、山本先生が大阪大学との共同研究の成果をまとめたもので、電子線トモグラフィーというコンピュータ断層撮影(CT)を電子顕微鏡レベルで行う最新の技術を用いたことが注目されています。
また、HIV(エイズウィルス)の増殖にオートファジーを利用していることを発見した、米国の研究者との共同研究論文が『Journal of Cell Biology』誌(8/10付)に掲載され、山本先生が撮影した電子顕微鏡の写真が、その号の表紙を飾っています。

『研究ジャーナル』誌に共同研究の成果を掲載

白井 剛先生(コンピュータバイオサイエンス学科)

『米国科学アカデミー紀要』誌に掲載された研究は、「超分子複合体モデリングシステム開発」についての研究成果の一部で、「DNA ligase- PCNA-DNA」という複合体の構造を、コンピュータを使ったモデリングと電子顕微鏡による解析により明らかにしたものです。
これは、DNA複製時にきれぎれに合成されるラギング鎖を連結して最後の仕上げをする複合体の働く仕組みを解明し、これからのDNA研究の基礎となる研究成果です。
4〜5個のタンパク質からなる超分子複合体の構造を解析することは今までは困難でしたが、この研究により、様々な研究分野の知識を集めてパイプラインをつくることで、解決することが可能となりました。この成果は、九州大学と大阪大学の研究チームとの5年間に渡る共同研究で得られたものです。