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学生実験で見つけた100年前の不思議な現象(その2)

長浜バイオ大学の2年次生の学生実験では、「タンパク質混合液のなかから、リゾチームという溶菌(菌を破壊)作用のある蛋白質だけを取り出す」実験をしています。ある日、学生はリゾチームを取り出すことに成功をしますが、溶菌作用が"ない"ことに気付きました。今村比呂志 助教、神村麻友 助教、川瀬雅也 教授は、この意外な結果をきっかけとして、100年前の「中村効果」の再発見に至り、その教育効果を報告しました。

学生実験の日常での“再発見”ストーリーを連載でご紹介します(その1その3へ)。

———学生実験で答えが用意されていないなんてあるんですね。
川瀬: 普通はあります。でも、やっぱり“実験”ですからわかってることばかりじゃつまらないんですよ。分からない現象もあった方が面白いですよね。長浜バイオ大学は学生実験をじっくり行うことができる環境なので、そんな“攻めた”実験も挑戦できるんです。

注:本文の内容を生成AIに描かせてみたものです(ComicAIを利用しました)。

———なるほど、まさに“実験”ですね。
今村: でも私たちもなぜ矛盾した結果となるのか答えが気になります。そこでリゾチームで溶菌していない原因を調べ始めたわけです。リゾチームは学生実験で使うほど有名なタンパク質なので、すぐにわかるだろうと思って。
———それでわかったんですか?
今村: いえ、それが全然わからなかったんです。新しい文献には載っていないし、こうだろうと思う仮説を裏付けようといくつか実験もしてみましたが、仮説は正しくない*ことが分かり、振り出しに戻りました。これはもしかして発見なのでは?と思い始めたところ、出会ったのが1923年にドイツ語で書かれた中村博士の論文でした。———(その3へつづく)
* 放射光実験施設(KEK, フォトンファクトリー)での実験が決定的証拠となりました。KEKの支援に感謝致します。

連載 その1その3

本成果は、生物工学会誌 (URL:https://doi.org/10.34565/seibutsukogaku.102.2_67)に掲載されました。
論文名「タンパク質の電荷を実感する学生実験の一工夫:リゾチームのイオン交換クロマトグラフィーと中村効果」(英題: A student experiment to realize protein charge via ion-exchange chromatography of lysozyme and Nakamura effect)
今村比呂志(共同第一著者, フロンティアバイオサイエンス学科), 神村麻友(共同第一著者,フロンティアバイオサイエンス学科), 川瀬雅也(メディカルバイオサイエンス学科), 生物工学会誌 102巻(2号), 67-75.