×

2019年度 長浜バイオ大学入学式 学長式辞

 湖北長浜でも湖面を渡る風に、梅や桜の香りが混ざるようになり、春の訪れを感じることができるようになりました。本日ここに、多くのご来賓の皆様のご臨席を賜り、2019年度4月の長浜バイオ大学入学式を挙行できますことは誠に喜びに堪えないところであります。本日、めでたく長浜バイオ大学に入学されたバイオサイエンス学部生は、フロンティアバイオサイエンス学科93名、臨床検査学コース25名、メディカルバイオサイエンス学科79名、アニマルバイオサイエンス学科54名の総計251名であり、本学大学院におきましては、バイオサイエンス研究科博士課程前期課程20名、博士課程後期課程5名となります。また、バイオサイエンス学部に入学された学生の中には海外からの留学生も含まれており、優秀で意欲にあふれた若者が、日本全国、世界各地から長浜バイオ大学に集ってくださったことに感謝しております。私は、大学進学に向けて、あるいは、大学院進学に向けて一生懸命取り組んできた新入生の皆様、ならびにご列席のご家族・ご関係者の皆様に対し、本学教職員、在校生を代表して、心よりのお祝いと歓迎のご挨拶を申し上げます。

 長浜バイオ大学は、時代を切り開く視野と創造性、高いバイオサイエンス、バイオテクノロジーの専門知識と技術力を身に付けた人材を養成すること、世界でもトップレベルのバイオサイエンス研究を行い、学術文化の発展に貢献すること、および、地域社会の発展や産業の振興、国際交流の発展に貢献することを目的として2003年に開学しました。現在、長浜バイオ大学は、従来の生物分野だけにとどまらず、有機化学、無機化学、コンピュータ科学、環境科学、物理化学、臨床検査学などの幅広い分野を備えたバイオの総合大学として発展すると共に、社会に貢献しうるバイオサイエンスの新知見を長浜の地から発信する知の拠点としても成長しました。これは、実際に、昨年度に生命科学分野において最も権威のある論文とされている「ネイチャー」への掲載数が全国の大学で47位、ネイチャーの論文数を教員数や学生数で割ると全国でもトップクラスに位置することからも証明されております。

 また、長浜バイオ大学にとって非常に喜ばしいニュースとして、昨年度本学の全ての学科で行われている教育プログラムが、JABEE 認定されました。JABEE 認定を受けた大学は、そこで行われている教育活動の質が国際的にも満足すべきレベルにあることと、その教育成果が技術者として活動するために必要な最低限度の知識や能力の養成に成功していることが担保されます。そのため、JABEE プログラムを終了した学生は、国際的に見ても十分に高いレベルの技術と知識を取得した学生であることが認められ、国家資格の中では司法書士と同レベルであると認定される技術士の受験資格を持つ、「技術士補」という国家資格を無試験で得ることができます。このように、大学の全ての学科で行われている教育プログラムがJABEE 認定を受けている大学は、全国的にも本学をおいて他にほとんど例がありません。

 現代社会では、サイエンスイノベーションと呼ばれる科学技術の大きな変革が起きており、これにより社会の構造だけでなく、人々の価値観までもが変化しようとしております。ほ乳類の細胞を初期化し様々な組織へと分化させることができるiPS 細胞、ゲノム情報を書き換えることで新品種を作りだし、様々な遺伝病の克服などに広く利用される可能性を有するゲノム編集、ディープラーニングによる人工知能の開発やこれを用いた様々な作業の効率化、人工知能搭載ロボットの開発などがその例となります。日本の社会は、このような画期的な新知識や新技術を導入することで、大きな構造変化と価値観の再構築を起こすでしょう。また、厚生労働省の専門家会議で、ゲノム編集を用いて作製した収穫量が増えるイネや筋肉量が増大したマダイなどを、届け出だけで販売できるようにすると決定され、今年の夏からゲノム編集で作製した農水産物が一般販売されることになることからも、サイエンスイノベーションによる社会構造変化と価値観の変化は想定以上の速度で進むと思われます。このように激変した社会で活躍するためには、サイエンスイノベーションを理解し、その技術を習得する必要性があります。長浜バイオ大学では、このような社会に対応できる人材を育成するため、本年度からバイオサイエンス学部を全面改組し、臨床検査学コースを含むフロンティアバイオサイエンス学科、メディカルバイオサイエンス学科、アニマルバイオサイエンス学科として再出発することになりました。これにより、学科の名称だけではなく、教育プログラムも新しくなり、本学の新教育プログラムを履修することでサイエンスイノベーション社会においても活躍できる人材に育つように設計されております。

 さて、入学生の皆様は、本日から長浜バイオ大学で勉学に励む大学生となります。大学生には、多くの自由が保障されており、大学においてどのように学ぶか、または学ばないかという選択すらも本人に任されております。しかし、このような大学での自由は、学生個人の大きな責任の上にのみ成り立つということを新入生の皆様は忘れないでいただきたいと思います。大学での学びは、高校までとは大きく異なります。高校では、教科書に沿って勉強し、問題の正解を習い、この問題の理解度をテストで確認しています。一方、大学では、高いレベルの知識と教養を習得すると共に、自分で課題を見つけ、回答を模索したり、想像したりします。新入生の皆さんは、これまでは、すべての問題に正解があるという前提で勉強してきたと思います。しかし、皆様の未来には予想できない世界が待っているのと同じように、大学では答えが用意されていない問いについても対応しなければいけません。私は、ここに集ったすべての皆様が、本学の教育プログラムの中で、自ら学び、学業を修め、答えが用意されていない問いに積極的に取り組み、サイエンスイノベーション時代においても活躍できる人材に育ってほしいと願っております。

 皆様の中には、長浜バイオ大学に入学したが、将来何になりたいのか、どのような方向に進みたいのか、何をどうやって学べば良いかということについて、明確なビジョンを持っていない学生もいるかと思います。私は、現時点において、将来のビジョンややりたいことが明確になっていなくてもよいと思います。世界を席巻する巨大企業GAFAの一翼を担うアップル社を立ち上げたスティーブ・ジョブズは、全米屈指の大学であるカリフォルニア大学やスタンフォード大学は「やりたいことが分かっている学生が行くところだ」という理由で入学せず、一般教養科目に力を入れていたオレゴン州のリードカレッジという学生数1400人程度の単科大学に入学しました。この大学でジョブズは、多くの講義を受講しましたが、特に、アルファベットやその他の文字を美しく見せるための飾り文字の手法であるカリグラフの講義に興味を持ち、科学ではとらえきれない、伝統的で芸術的な文字の世界に魅了されたそうです。その後、ジョブズはガレージでパソコンを組み立てて販売するアップル社を設立し、いくつかヒット商品を送り出した後、有名なマッキントッシュというコンピュータを制作しました。このマッキントッシュをデザインしているときに、ジョブズは大学の時に学んだカリグラフィを思いだし、持っていたカリグラフの知識をマッキントッシュのなかに盛り込み、美しいフォントを持ったマッキントッシュコンピュータを作り出しました。もし、ジョブズが、カリグラフィについて勉強していなかったら、我々は今のように沢山の美しいフォント、すなわち字体を使用できなかったかもしれないのです。新入生の皆様も、長浜バイオ大学で思う存分学び、芸術・スポーツなどに取り組み、一生の宝となる貴重な人間関係を構築することで、将来の自分が社会で活躍するための貴重なアイテムとなる多くの種を習得してください。長浜バイオ大学は、皆様の夢の探索、夢の実現がかなうように、優秀な教員と職員をもって皆様をお迎え致します。皆様は思う存分これからの大学生活を楽しんでくださることを心から願っております。

 また、本日大学院に入学された学生諸君にも私からお願いがあります。大学院での学びは、学部の時とは異なります。大学院での学びは、答えが見つかっていない問題の探求を通した自分磨きです。そのために、大学院では、問題を整理しその解決法を考え、それを実践し、その結果を正確に理解すると共に、他の人と論理的な議論を行うことが必要となります。さらに、この議論の中から問題点が見つかったら、それを解決するための方策を考え、それを実践するというプロセスを繰り返すことになります。この様な学習方式は、企業や大学などでの業務を行うときに必要とされるPDCA サイクルと同じだと思います。すなわち、大学院での研究活動を能動的に進めることにより自然とPDCA サイクルを意識した仕事の進め方も身につきます。PDCA の概念は、現在社会においては基本的な概念であるため、大学院での研究を能動的に進めた学生は、どのような分野においても、非常に有能で仕事が出来る人材として評価されることになります。能動的な研究と学びを実践することにより、新しい社会のリーダーとして育ってくれることを切に願っております。

 多くの学部新入生の皆さまにとっては、これから始まる学部生としての4年間は、人生において、最も自由に学問や芸術・スポーツなどに取り組み、一生の宝となる貴重な人間関係を構築することのできる最後の機会となります。また、大学院に入学された皆様においては、教科書に掲載される知識を発見、解明していく期間であり、新たな学問の知の財産を人類の幸福のために生かす上での貴重な研究中心の生活になると思います。

 新入生の皆様にとってこのように貴重な4年間、または大学院期間を長浜バイオ大学は全力でサポート致します。この貴重な期間が皆さんにとって実り多いものとなることを祈念して、私からの式辞とさせていただきます。

2019年4月1日  長浜バイオ大学 学長 蔡 晃植

ページの先頭へ