湖北の長浜にも、もうすぐ桜の便りが届きます。野山の芽吹きにも春を感じる季節となりました。本日、長浜市長、浅見宣義様、長浜商工会議所会頭、大塚敬一郎様を始め、ご来賓の皆様のご臨席を賜り、ここに2025年度長浜バイオ大学入学式を執り行うことができ、大変嬉しく思います。今日、バイオサイエンス学部へ、23期生として、フロンティアバイオサイエンス学科45名、フロンティアバイオサイエンス学科臨床検査学コース24名、アニマルバイオサイエンス学科59名、バイオデータサイエンス学科20名、の148名が入学され、また、大学院バイオサイエンス研究科に、博士課程前期課程19期生として38名、博士課程後期課程19期生として5名が進学されました。皆様、ご入学・ご進学おめでとうございます。ご家族・ご関係の皆様にもお祝い申し上げます。長浜バイオ大学教職員、在校生一同、心より歓迎いたします。
皆様は、バイオサイエンスを学び、テクノロジーを修得しようと本学に入学され、また、その学びを進め、さらに研究を深めようと大学院に進学されました。今、バイオの世界は大きく変わりつつあります。2024年のノーベル化学賞は、全く新たなタンパク質をコンピュータで設計して合成したワシントン大学のベイカー博士と、タンパク質の立体構造を予測する画期的なAIモデルを開発したグーグル・ディープマインド社のハサビス博士、ジャンパー博士に贈られました。タンパク質の立体構造をAIで正確に予測し合成できるようになり、医薬品開発などへの応用が期待されています。本学でも、コンピュータ計算によりタンパク質の立体構造モデルを作成する、分子同士の相互作用を探索するなどの研究を行っています。また、細胞培養とAIの融合により「細胞の見える化技術」を開発し、細胞医療や新薬開発を推進する本学発のベンチャー企業も誕生しています。このように、バイオの世界においてもAIは必須となってきました。さらに、生成AIの登場により、AIが、膨大な量のデータで自ら学習を重ね、その中でデータの特徴や関係性などを見出し、そのようにして獲得した学習成果から、新たなテキストや画像、動画や音声を創造できるようになりました。キュビズムで有名なスペインの画家、パブロ・ピカソは、「コンピューターなんて役に立たない。 だって、答を出すだけなんだから」と言ったそうです。ピカソは長生きでしたが、1973年に91歳で亡くなっており、その時代のコンピュータは、一種の計算機だったでしょうし、創作は結果だけでなく創作過程も重要である、という意味もあったかもしれません。今、そのコンピュータが出した答の膨大な集合体がデータとして意味を持ち、コンピュータ自身が新たなコンテンツを創作する時代となりました。もし、ピカソが生きていたら、生成AIを駆使して全く新たな芸術を生み出していたかもしれません。これからの時代を生きる皆様は、生成AIを、研究で利用する、学習でレポートや論文作成に活用する機会も多いことと思います。長浜バイオ大学では、この新しいテクノロジーを「主体性を持って適切に利用する」スキルを身につけることが必要との考えから、生成AIの利用を奨励しています。一方、生成AIには、弱点もあります。生成AIは、必ずしも正確に真偽の判断ができません。生成AIは学習データに基づいて出力するため、誤った情報に基づいて学習すると、フェイクニュースや有害な偽情報を生成してしまう可能性があります。データ自体に偏見があれば、生成された回答が偏ってしまう危険性があり、画像生成AIでは、既にある画像の著作権を侵害する恐れもあります。あくまで生成AIは支援ツールに過ぎません。生成AIを利用する上で大切なことは、出力されたものを鵜呑みにすることなく、使う人がその目で確認・精査し、最終的に判断し責任を持つことです。将来のバイオサイエンティストを目指す皆様は、長浜バイオ大学で積極的に学び、大学院で自ら考え研究することを通して、バイオサイエンス・テクノロジーの分野で、生成AIのウソを見抜くだけの確かな知識を身につけて下さい。その学びを礎としてこれからの社会を発展させ活躍するのは、今日、入学・進学された皆様です。
皆様は、今、新しい生活に期待し、夢を持っておられることと思います。先ほどのピカソは、20世紀最大の画家と言われ、油絵だけでなく素描、版画、彫刻、陶芸など、生涯におよそ14万点以上の作品を制作し、そして多くの名言を残したことでも知られています。「行動がすべての成功への基本的な鍵である」は、その一つです。この言葉のように、全ての始まりは行動することにあります。成功には運、タイミング、方法、もちろん努力、などさまざまな要因がありますが、行動しなければ、失敗も成功もありません。いわゆる成功者は、何か特別なことをしたり、特別な才能を持っていたりすると考えがちですが、実際には、行動を起こす勇気を持つことが必要なのかもしれません。ピカソは行動することから色々なアイデアを得て、多くの作品を残したのでしょう。そして、「できると思えばできる、できないと思えばできない。これは、ゆるぎない絶対的な法則である」とも言っています。これは、単に楽観的に考えることを推奨しているのではなく、困難な状況に直面した際にも、自分はできるという強い信念を持ち続けることが大切で、自己肯定感を保つことが重要であるということでしょう。ピカソ自身、フロンティアスピリットにあふれ、前人未到の表現に果敢に挑戦した人でした。行動する前からできないと思っていればできるわけがない。自分ができると信じて行動することができれば、実際に目標に到達できる可能性が高くなり、逆に、自分ができないと思い込んで最初から挑戦することを諦めてしまうと、成功の可能性も低くなってしまう。ピカソのこの言葉は、失敗を恐れず自分を信じて行動し、自分の夢に向かって進むよう、背中を押してくれています。何かを迷っている時「とりあえずやってみよう、やるっきゃない!」と考え、第一歩を踏み出してみましょう。少しずつ小さな目標を達成し、自信を積み重ねて夢に向かって頑張る皆様を、長浜バイオ大学は全力で応援します。そのことをお約束して、私の式辞と致します。
本日は、ご入学、ご進学、おめでとうございます。
2025年4月1日 長浜バイオ大学 学長 伊藤 正惠