
学科の学び
バイオサイエンス学科では、生物学、農学、薬学、医学などの幅広い領域にわたるバイオサイエンスを、分子から個体、さらに環境レベルに至る階層的生命観を縦糸に、基礎から最先端までの科学的知見を横糸に織り上げながら総合的に学びます。そのため、2013年度までは、「遺伝子生命科学コース」、「分子生命科学コース」、「細胞生命科学コース」および「環境生命科学コース」の4つの専門コースを開設していました。
2014年度から新たに導入される教育プログラムに従い、これらの専門コースを廃止し、新たに3つのプログラム(創薬・機能物質プログラム、環境・植物制御プログラム、遺伝子・細胞新機能プログラム)が生まれます。
従来の専門コース制度は、階層的な生命観に基づいた区分により分割されており、それなりに意味があるものでしたが、学生にとってコースの選択に際し、この専門コース制は必ずしも分かり易いものではありませんでした。教育プログラムの導入により、従来の専門コース制に比べ、1)学生は修学の目標と動機付けがより具体的に提示されたプログラムの教科と実験・実習を選択することができるようになります。また、2)専門コース制度よりも、就職や進学に際して、さらに明確な出口イメージを持ちつつ、基本から実践に至るバイオサイエンスの知識と技術を学習することができることで、食品、医薬、エネルギー、環境などの分野の社会的ニーズに具体的に対応できる次世代を担う人材の育成が図られる(学士力の保証)ことになります。
学科の教育プログラムの概要
バイオサイエンス学科の専門教育プログラムは、3学科共通の「学部共通専門コアプログラム」とバイオサイエンス学科のみに配置された3つのプログラム(「創薬・機能物質プログラム」、「環境・植物制御プログラム」、「遺伝子・細胞新機能プログラム」)からなります。
「学部共通専門コアプログラム」は、4つのユニット(「生命科学専門教育ユニット」、「物質科学専門教育ユニット」、「ビジネス専門教育ユニット」、「応用科学実験ユニット」)から構成され、バイオサイエンス学科、アニマルバイオサイエンス学科、コンピュータバイオサイエンス学科の3学科の学生が共通して学ぶ必要のある専門教育科目を配置し、生物学、農学、薬学、医学などの幅広い領域にわたるバイオサイエンスを学ぶために必要な専門的知識を把握し、専門的技術を修得できるように配置しています。
創薬・機能物質プログラム
本プログラムではバイオサイエンスの技術的な実体であるバイオテクノロジーを考慮し、医薬産業の中心的な研究テーマである創薬、化学工業、食品産業や環境・生活への応用を意識した物質生産(機能物質)に関連した科目と実験科目を、プログラムの中核に据えて配置しました。これらの科目の修得により、創薬科学専門教育ユニットでは医薬に対する的確な情報のみならず、医薬産業において行なわれる研究や研究技術の実際を基礎から学ぶことで、これらの分野で求められる多様な人材の育成を目指します。また、機能物質専門教育ユニットでは、物理系・化学系といった異なる知識体系を持つ専門家と双方向的に協力関係を築くことのできる幅広い視野を持ちながらバイオサイエンスへの専門性を深めることで、バイオ系企業・化学工業・食品産業・環境産業などが求める課題解決型人材を育成します。
創薬・機能物質基礎教育ユニット
薬剤などをはじめとする生体機能分子の機能への理解を深めることにより、バイオサイエンスに関連した物質科学の基盤的知識の確立を図ります。さらに、タンパク質・核酸・糖質・脂質など生体分子の構造と機能、および遺伝や生体制御についての基本的な知識、その応用事例として生体成分の分析手法の原理と適用例を理解することで、創薬・機能物質の基礎知識を修得します。
創薬科学専門教育ユニット
創薬(低分子医薬およびバイオ医薬開発)に必要な専門知識の基礎を学びます。医薬品の開発方法、薬の生体に対する作用、疾患に対する薬剤の効能を理解し、さらに、その背後にあって疾患の原因とも、標的の対象ともなる遺伝子の発現調節やタンパク質による生体制御を学ぶことにより、創薬に対する理解を広げ、創薬研究に携わることを可能とする専門知識を修得します。
機能物質専門教育ユニット
①医薬品や機能性食品の一般的な理解、②バイオ関連の試薬・機器の開発、生物工学関連技術全般の理解、③産業用酵素や微生物発酵を利用した有用物質生産技術の理解、④品質保証と製造時の環境基準適合の理解の④項目が教育目標です。これらの理解を通じて、バイオサイエンスに関連した物質科学の専門知識の基礎を修得します。
環境・植物制御プログラム
環境生態系を構成する植物や動物、微生物などの仕組みや生命の営みを深く理解すると共に、環境生態系における生物間の相互関係についても学ぶことで、個々の生物体から生態系全体まで俯瞰的に見渡すことが出来る応用力を持つともに、目的達成のために必要な思考力や展開力、コミュニケーション能力をも兼ね備えることが出来ます。本プログラムでは、生態系の評価とそれに基づく環境修復、様々な生物における環境応答システムの解明、次世代型生物環境システムの構築などの分野において、専門的な能力を発揮できる科学者、技術者を養成します。
環境科学基礎教育ユニット
環境浄化や生態系の維持、生物の機能制御を行うために必要な基礎的知識の確立をめざします。特に、地球環境の生態系を構築する動物、植物、微生物の仕組みからその生理、形態形成、遺伝学まで幅広く学習することにより、生態系を構築する生物を分子レベルで理解することが可能になります。
植物科学教育ユニット
地球環境における絶対的な生産者である植物や藻類について、幅広い知識の確立をめざします。特に、植物に関する概論から生理学、遺伝学までの基礎知識を体系的に学ぶと共に、組換え植物の基礎やその応用についても学習します。また、これらの基礎知識と共に、植物物質生産制御法についても学ぶことで、植物に対する基礎から応用までの幅広い知識を身につけます。
環境科学応用教育ユニット
植物や微生物、動物を用いた環境制御や物質生産などへの応用例と応用可能性について理論レベルから学びます。特に、生理活性物質や環境分析、生体応答について学ぶことで、地球環境を分子の言葉で理解すると共に、環境影響の評価法などを学ぶことで、環境制御や物質生産制御の具体的な方法についても理解を深めます。
遺伝子・細胞新機能プログラム
すべての生物が持つ遺伝子、その情報を基に構築される細胞について深く学ぶことを通して生命現象を理解し、現在急速に進歩している遺伝子解析に立脚した予防医学やテーラーメード治療、細胞技術に基づく再生医療などの新しい先端生命科学の基礎・応用分野で活躍できる研究者や専門技術者を養成します。
遺伝子・細胞生命科学基礎教育ユニット
遺伝子生命科学・細胞生物学を専攻するための基礎的知識を確立します。遺伝子や細胞を物質として理解し、これらを構成する核酸、タンパク質、糖質、脂質など生体分子の構造と役割についての知識と技術を修得します。
遺伝子生命科学教育ユニット
遺伝子に込められた生命情報の発現について、最先端の調節機構を理解するとともに、生物進化と多様性、発生、発癌、遺伝病などの遺伝子の関わる生命現象の仕組みを知ります。その基盤の上に、遺伝子解析や遺伝子治療などの分野の発展に寄与することのできる高度な知識と技術を修得します。
細胞科学教育ユニット
細胞生物学を基盤とする研究者、技術者として活躍するために必要な知識と技術を修得します。特に再生医療や発生工学などに展開できる専門知識を身に付けることができます。