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山本章嗣教授らの共同研究が『PNAS』 に論文掲載

 ヒト顆粒球アナプラズマ症の病原菌が宿主の細胞にオートファジーを誘導する機構とその意義を明らかにした研究論文が米国科学雑誌「PNAS」(12/18付)に掲載されました。
 この論文は、米国オハイオ州立大学・獣医学部、力久泰子教授を中心とする共同研究によるもので、本学アニマルバイオサイエンス学科、山本章嗣教授は、主に免疫電子顕微鏡的解析を分担しています。
 「ヒト顆粒球アナプラズマ症」はマダニによって媒介される人獣共通の感染症であり、新興感染症として対応が急がれています。その病原菌のAnaplasma phagocytophilumは、リケッチアの仲間であり、顆粒球(白血球に属する)内に侵入して増殖します。この細菌は顆粒球の食胞に取り込まれるとtype IV分泌装置を用いて、Ats-1というエフェクタータンパク質を宿主の細胞質に分泌します。本論文では、細胞質に分泌されたAts-1がオートファジー必須タンパク質のべクリン1と結合して、宿主細胞にオートファジーを誘導すること、オートファジーを阻害すると増殖が抑えられることを明らかにしました。本病原菌は、宿主のオートファジー経路を乗っ取り、食胞内への栄養供給に用いていると考えられます。この一連の研究成果は、オートファジーをターゲットにした病原菌の巧妙な増殖戦略の一端を明らかにしたもので、今後、アナプラズマ症の治療法の開発への応用が期待されます。

Niu H, Xiong Q, Yamamoto A, Hayashi-Nishino M, Rikihisa Y.
Autophagosomes induced by a bacterial Beclin 1 binding protein facilitate obligatory intracellular infection.
Proc Natl Acad Sci U S A. 109, 20800-20807, 2012.

Abstract
 

【教員の紹介】 山本 章嗣