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第184回バイオセミナーのご案内

第184回バイオセミナーは立命館大学 薬学部 創薬科学科・教授の北原 亮先生にご講演いただきます。タンパク質に数千気圧の圧力をかけながらNMRや蛍光など各種分光測定を行うという特徴的な方法で、タンパク質のかたちの変化を研究されています。

先生方、大学院生の皆さんをはじめ、学部学生の皆さんも、ご専門の研究分野を問わず多数ご参加ください。

日 時:2021年11月30日(火)15時20分~16時40分
会 場:命北館4階 中講義室6

演 者:立命館大学 薬学部 創薬科学科・教授 北原 亮 先生(専門分野:生体分子構造学、生物物理学)
演 題:「圧力軸から迫るタンパク質の液-液相分離と異常凝集」
要 旨:筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者において、RNA結合タンパク質TAR DNA-binding protein (TDP-43)やFused in Sarcoma (FUS)が作るアミロイド線維や非アミロイド性細胞内封入体が確認されており細胞毒性を示す。FUSが原因となる家族性ALSでは、その細胞内凝集が原因と特定されている。FUSは細胞内でストレス顆粒と呼ばれる可逆的な液滴(液液相分離, LLPS)を形成するが、時間とともに可逆性が失われ、ハイドロゲルやアミロイド線維など不溶性凝集体へと転移する。そのため、LLPSの構造や物性研究は、凝集メカニズムの理解のために重要である。
我々は、圧力と温度が可変できる紫外可視分光光度計(UV/vis)を用いて、FUSについて常圧で安定なLLPS(LP-LLPS)に加え、高圧で安定なLLPS(HP-LLPS)を見出し、LLPSの圧力・温度相図を完成させた(Li et al. J. Phys. Chem. B 125, 6821-6829, 2021, Kitahara et al. JACS in press)。LP-LLPS及びHP-LLPSの形成と消失は可逆的であるが、HP-LLPSでの滞在時間が長くなると不可逆的な性質が出現することも見出し、LP-LLPS ⇄ HP-LLPS→不可逆凝集体という仮説を提案した。