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京都新聞「取材ノートから」に掲載されました

長浜サイエンスパーク 資金確保や連携に課題

長浜支局・甲賀史郎
 長浜市南部を拠点にバイオ関連企業、研究所の集積を目指している「長浜サイエンスパーク」。全国初のバイオ系単科大学が開学して5年。起業支援施設が企業を創出し、更地状態だった企業用地にはこの1年で5社の進出が決まった。目に見える成果が出始めた一方、バイオビジネスは産業化までに時間がかかる。研究資金確保や他地域との連携、滋賀県や市の支援体制を含め、課題も見えてきた。

バイオ集積地

敷地面積12・5ヘクタールの同パークは、JR北陸線田村駅西口に広がる。2003年4月、中核施設の長浜バイオ大が開学。3年後に公設民営の「長浜バイオインキュベーション(起業支援)センター」が開所し、隣接六区画で市が企業誘致を進めてきた。

 もともと長浜市にはバイオ関連企業がほとんどなかった。関西では、神戸市の「医療産業都市構想」や、大阪府北部の「彩都ライフサイエンスパーク」など、全国有数のバイオ産業の集積地づくりが進んでいる。「人口8万5千人規模の市では、例のない構想」(市商工振興課)だった。

 バイオ大は、高度な技術者養成を目指した実践的な研究を特徴とし、07年度には大学院を開設。当初から産官学連携にも注力、初年度5件だった共同、受託研究は昨年度20件に増えた。下西康嗣学長は「創薬や食品、環境はじめ、各領域の研究成果をどう有用化するか。産官との連携で大学の役割を果たしたい」と話す。大学発ベンチャーはすでに3社生まれた。

 大学や研究機関との共同研究の足場にもなるインキュベーション施設は17室あり、農業や環境、再生医療関連企業などが入居。起業後、資金難や販路の問題に直面する企業は多いが、農業系を中心に事業化の芽も出始めた。植物種子を使った高機能食品を開発する企業は、原料調達などで地元の農業法人と共同事業を開始。08年度に1億円の売り上げを見込んでいる。

創出から育成へ

 県も同パークを「経済振興特区」の1つに認定、拠点づくりを支援してきた。同センターの賃料補助や県税減免などで立地企業に助成。市も分譲以外に賃貸制度を導入するなどし、年度内には全区画が埋まる見通しだ。

 ただ、バイオ企業の創出から育成段階に入り、課題もある。県の特区制度は5カ年の最終年度となる。来年度以降の施策について、嘉田由紀子知事は「産業振興の新指針に沿って、全体計画の中で判断する」とし、従来通りの後押しが期待できるかは微妙だ。

 今後、他府県の大学や企業などとの広域連携が課題とされ、市独自の支援には限界もある。市商工振興課の北川典明課長は「パーク全体をマネジメントする機能が不可欠で、人的、資金的な充実は必要」と苦心する。「バイオ集積」を掲げた地域活性化の挑戦には、息の長い振興策が求められている。

[京都新聞 2008年7月1日掲載]