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大島淳教授 クズからバイオ燃料

 長浜バイオ大学大島淳教授らのグループがバイオエタノールをクズの葉や茎から取り出すことに成功しました。
2008年11月5日 朝日新聞

【エタノール生成 大島・バイオ大教授ら成功/穀物に代わる原料期待】
 石油の代替エネルギーとして注目されるバイオエタノールをクズの葉や茎などから取り出すことに、長浜バイオ大の大島淳教授(遺伝子工学)らのグループが成功した。雑草として、刈り取られることが多いクズから、高濃度のアルコールが生成できるため、価格が急騰するトウモロコシなどの穀物に代わる原料になればと期待される。(高久潤)
 バイオエタノールは植物をアルコール発酵させてつくる。光合成で酸素をつくる植物を原料とするため、京都議定書では、燃焼させても二酸化炭素の排出量は「ゼロ」とみなされる。米国やブラジルなどでは、原料としてトウモロコシやコムギの栽培が盛んだが、近年の穀物価格の急騰の主要因とも指摘される。
 大島教授らは、クズに含まれたでんぷんをエタノールに変えるため、すりつぶしたクズの茎や葉、根にグルコース(ブドウ糖)や酵母、こうじ菌を添加。これを72時間、約30度で温めて発酵させたところ、濃度11.38%のエタノールができたという。大島教授は「トウモロコシでも濃度は8%ぐらい。クズで高濃度のものが取り出せるのは驚きだ」と話す。現在、改良を進め、微量のグルコースを加えた葉や茎から5%ほどのエタノールを取り出すめども立っているという。
 クズに着目したきっかけは、自然素材から金属加工液を製造する会社「タイヨウテック」(東近江市建部下野町)を経営する、共同開発者の福谷泰雄さん(68)の「失敗」だった。数年前に自社の製品を使った工場で、作業員が気分が悪くなって病院に運ばれる事故が起きたため、福谷さんらは加工液を分析。アルコールが検出されたという。最近、バイオエタノールの話題を耳にする機会が多く、「もしかしたら」と思い、今年5月に大島教授に共同研究を持ちかけたという。
 クズはくず粉として使用されるほかは、雑草として刈り取られることが多い。大島教授は「クズは多年草のため、刈り取られても、すぐ生える。貯蔵施設をつくり、アルコールを安定的に生成できるようになれば、実用化は可能」とみる。大島教授らは、この生成方法を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する今年度の「エコイノベーション推進事業」に申請。採用されれば、実用化に向けた調査に乗り出すという。