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FD/SD研修「AI(人工知能)と大学の近未来」を開催

7月28日、山梨学院大学 学習・教育開発センター顧問の船戸高樹先生をお迎えし、「AI(人工知能)と大学の近未来~求められる新たな大学像の構築~」をテーマにFD/SD研修を開催しました。

研修会では、大学を取り巻く環境の変化等を再認識すると共に、AIが教育・研究にどのような影響を与えるか、さらにAI教育が築く近未来社会について講演いただきました。オックスフォード大オズボーン博士による「半分の仕事が今後AIやロボットに代替される」という衝撃的な予測が注目されています。そのような時代に私たちはどうあるべきか、考えるよい機会となりました。とりわけ、AIに対する正しい知識を教職員全員が共有し、学生らのキャンパスライフを充実させる良きパートナーとしてAIと協働、共存していくことが求められ、仕事の質自体が変わってくることを認識しました。来たるべきAI時代に直面し、その時代を生き抜く現在の学生らに、今私たち大学教職員が出来ることについて考える有意義な研修となりました。

<講演要旨>

大学を取り巻く環境は18歳人口の減少に伴い大きく変化しており、定員割れ私学は44.5%にのぼる。都市部の大規模校は定員増をしており、学生志望が集中する傾向にある。本学の含め、地方の公民協力型大学(120校ほど)は比較的新しい小規模校が大部分であり、経営不安定から公立への転換が散発するなど、特に厳しい状況におかれている。簡単に内容を変えたり、場所を移動できない大学が環境変化に対応するためにはどうしたらよいのか。「大学改革は饅頭、その心は中身は餡(案)ばかり」と揶揄される。また、近年の横文字用語(アクティブラーニングなど)の氾濫は、本質の理解が不十分のまま進められる状況を生み出している。

ところでAI(人工知能)の技術革新が現在急速に起こっている。ハードの充実に伴いディープラーニング機能の付与がAIの能力を著しく高めつつある。ハードの発展がAI冬の時代を乗り越え、第3次AIブームと呼ぶべき状況を作り出した。オックスフォード大学のオズボーン博士が数年前に提唱した10~20年後に半分近くの職業がAIやロボットに代替されるという予測は、現実感をもって受け入れられている。社会にAIが進出すれば、光と影が生まれ、AIにどう倫理を持たせるかが問題となるだろう。しかし、大学に置いても法人・大学・教育の各段階で変革を迫られることは間違いない。AIと共存できる者だけが生き残ることができる状況になるかもしれない。

実際、教育機関でAI化が始まった事例が出ている。TA、一般教育、専門基礎教科などから、AIへの置き換えが進行する可能性がある。事務部門では近畿大学で導入が始まっており、スマホを利用した事務の効率化に寄与が期待されている。数名の雇用を置き換えれば、導入は可能である。しかし、AI導入と雇用維持を引き換えにして本当に良いのであろうか。AIには得意不得意分野があり、苦手とするものは「愛すること、配慮すること、満足すること」である。人の働き方は、AIができない分野にシフトすることが求められ、働き方改革が迫られる。

米国で進むAI導入は、大学教員のテニュアからパートタイム、パートタイムからAI教員への流れをもたらしており、同様の圧力を日本でも生む可能性がある。米国の大学での教育形態は①「F2F」主型(上位校)、②AI主型(オンライン教育を特徴とする営利型大学)、③ハイブリッド型(州立大など多くの大学)に分類される。日本での導入は、これからであり高齢化の急速に進む社会での成功事例となるべきである。その点で、大学教職員は正しいAIに対する知識を共有すべきである。AIはライバルでなく、学生の生活充実をもたらすパートナーであり、協働と共存を求めて今から準備すべき課題である。

特にAI時代に対応した人材の教育は重要である。AIリテラシーを持つ学生を育てるために、教員はカリキュラムの改善に取り組むべきである。「教育の利息は最大の利益」(B・フランクリン)である。しかし、米国でもAIに理解のある教員は20%にすぎない。AIに対する正しい知識をまず教職員が持つことが最初のステップである。