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第100回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年3月11日(火)15時40分〜17時00分
場 所:命北館4F 中講義室5
テーマ:エクソソームの差分化法の確立
講 師:公益財団法人 がん研究会 がん研究所
     蛋白創製研究部 部長  芝 清隆 先生

【講演内容】
 「エクソソーム」は細胞が分泌する小胞で、その直径は約100nmぐらいとされている。エクソソームの中には、それを放出する親細胞に由来するタンパク質や核酸が含まれており、これら生体高分子は、エクソソームを取り込んだ細胞の中で機能することが分かっている。すなわち、細胞はエクソソームを介して細胞間コミュニケーションをおこなっており、これが、がんの転移、神経疾患、免疫制御、骨形成などに関わっていることが明らかにされつつある。血液、尿、唾液などのあらゆる体液の中から多量のエクソソームが見つかっており、これらの体液中のエクソソームをうまく利用した新しい診断法、治療法の開発が期待されている。
 このように、新しい医療の創成につながる勢いで発展している「エクソソーム」研究であるが、大きさが100nmと小さいために、全体像の把握が容易ではない。エクソソームの「精製」や「定量化」といった基本的な操作においてすらコンセンサスがない状態で、それぞれの研究が何をもって「エクソソーム」としているかも定まっていない。
 エクソソーム研究のさらなる発展のためには、「精製」や「定量化」といった基盤部分での技術の確立が急務である。特に、いろいろな細胞から放出されたエクソソームの「ミクスチャー」の中から、特定の細胞(組織)に由来するエクソソームだけを差分化する技術の開発は、エクソソーム医療実現において重要な位置を占める。われわれが進めている、「プログラムバイオ界面を用いたエクソソーム差分化法の開発」を中心に、がん分野におけるエクソソーム利用の可能性を含めて解説する。