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転写因子Pax6の機能を必須とする神経網膜と網膜色素上皮の領域化 ―視覚の獲得に必須の眼の初期発生メカニズム解析

田端 裕正さん(大学院博士課程後期課程2017年度修了)
山本 博章先生(バイオサイエンス学科)

脊椎動物の眼の網膜は、光を感知する細胞を含む神経網膜の細胞と、網膜色素上皮とよばれる一層の色素細胞に大きく区分されています。この神経網膜細胞と色素細胞は初期段階で脳の一部として発生しますが、これら神経細胞と色素細胞を分離する領域化が進まなければ、モノを視ることはもちろん眼球の形成にさえ重大な支障をきたします。

これまで神経網膜細胞と色素細胞の領域化には、眼の発生を制御するPax6というタンパク質の関与が広く知られてきましたが、領域化の詳しいメカニズムについては謎を残したままでした。そこで田端裕正さんと色素細胞を研究する山本博章先生は、転写因子として遺伝子発現調節に働くPax6がどのように関連遺伝子を制御して領域化を行うのか、ニワトリ胚の発生中の脳で、将来眼になる領域をめがけて、エレクトロポレーション法という特殊な方法を用いて、改変したPax6遺伝子を導入することで解明しようと試みました。

転写因子は核内でDNAと結合するため、核に進入する通行手形のような核局在化シグナルという特別なアミノ酸配列をもちますが、Pax6には2ヵ所の核局在化シグナルがあることが知られていたため、神経網膜細胞と色素細胞という異なる細胞を作る際にこれらの使い方(強弱を含め)が異なるのではないかと二人は考えてきました。今回の解析で、Pax6が持つ2ヵ所のシグナル配列の一方は、実は強さの異なる核局在化シグナルがいくつも集まった「領域」を形成し、これが進化的にも強く保存されていることを発見しました。この結果は、二人の当初の考えを支持するだけでなく、どのようにしてこの領域が創出され保存されてきたか、新たな進化的な課題も明らかにすることになりました。Pax6が関わる眼の発生過程解明の進展が期待されます。

これらをまとめた研究論文は、2017年1月、日本遺伝学会発行の『Genes & Genetic systems』にアクセプトされました。