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アニマルバイオサイエンス学科 / 学科教員の最近の研究成果

「大学案内2014」紹介分

野村 慎太郎先生
着床を制御するオステオポンチンを発見

英国MRC研究所で発生学を研究していた時代に、骨形成に重要な役割を果たすオステオポンチン遺伝子を発見し、胎盤GMG細胞でこの遺伝子が強く発現していることを1988年に英国の科学誌に論文を発表しました。

帰国後は医学部という環境もあり、骨の研究に専念せざるを得ませんでしたが、本学への赴任を機にずっと気になっていたGMG細胞について学内共同研究を25年ぶりに再開したところ、GMG細胞は免疫系の細胞で、胎児組織の着床を制御する重要な細胞であることが判明しました。

まさにその頃、東京大学(当時)の金野先生から連絡を受けました。「私は子宮組織の研究をしている。25年前のあなたの論文を読んだ。共同研究をしたい」という内容でした。まさにタイムリーな共同研究は順調に進行し論文として「PLOS one」(2012.11)に掲載されました。今後この分野でオステオポンチンの役割が注目されると思います。

中村 肇伸先生
初期発生メカニズムを解明し再生医療に貢献

受精卵がいろいろな器官の細胞へと分化することが出来る全能性を獲得する初期化(リプログラミング)には、遺伝子の変異を伴わずに発現が変わるエピジェネティック制御が深く関与しており、iPS細胞やクローン胚を用いた体細胞核の初期化においても重要な役割を果たすことが近年明らかになりました。

中村先生の研究室では、再生医療への応用を見据え、全能性を再獲得する効率が極めて高い自然生殖による初期発生のメカニズムを解明することで、将来的にはより質の高いiPS細胞の量産化に役立てることをめざしています。

2012年には、卵子に含まれるPGC7というタンパク質がDNAの脱メチル化を阻害し、リプログラミングにおいて非常に重要な働きをすることを明らかにした論文が『Nature』に掲載され、2013年度の文部科学大臣表彰において若手科学者賞を受賞しました。

齊藤 修先生
腸由来の細胞が渋味を感じることを発見

味覚には舌の味蕾で感じる甘味、苦味、酸味、塩味、旨味の五基本味と、味蕾を使わずに感じる渋味、辛味などがあります。後者の場合は感覚神経が働いていると言われており、中でも植物由来のポリフェノールなどを原因とする渋みに注目して、その仕組みの解明をめざしています。

味を感じる腸由来の細胞STC-1が、味蕾と同じように小腸で五基本味に反応する事を明らかにし、さらにお茶の苦味成分のカテキンにも反応する事を発見。この細胞の表面にあるタンパク質(TRPA1)が、渋みに反応するチャンネルだという事を解明した研究論文は、科学誌「Chemical Senses」(2012年2月)の表紙を飾り、編集者が注目するハイライト論文にも選ばれました。

さらに、舌や感覚神経で渋みを感じる仕組みの解明をめざして、研究を進めています。

荻野 肇先生
遺伝子抑制が進化の重要な役割を担うと解明

日米欧による国際共同研究チームで、両生類では世界で初めての成果となるネッタイツメガエルの全ゲノム配列の解読に成功、ヒトの疾患遺伝子の79%を持つことが判明し「サイエンス」(2010年)に発表しました。カエルはゲノム構造が哺乳類に近いので疾患研究に適しており、また、両生類は器官の再生能力が強いので、この研究成果はヒトの再生医療にも活用できるものと期待されています。

また、ヒトや魚、カエルなどの脊椎動物の祖先型動物ナメクジウオの遺伝子に注目、脊椎動物と比較して遺伝子にはその働きを活性化させるオン・スイッチだけでなく、抑制させて機能を発揮させないオフ・スイッチがあり、進化を複雑化させた重要な役割を担っていることを明らかにし、「ネイチャー・コミュニケーションズ」(2012年5月)に発表しました。

今後はさらに研究を発展させ、生体の形づくりの進化を明らかにしたいと考えています。

「大学案内2013」紹介分

山本 章嗣先生

細胞は、外部からの栄養供給を絶たれても、自分の一部を食べて飢えをしのぐことができます。この細胞機能をオートファジーと呼び、電子顕微鏡を駆使した研究でその解明を行っています。

私たちの研究も含む最近の研究により、オートファジーは、傷害を受けた細胞小器官(オルガネラ)、有害な異常タンパク質や病原菌なども積極的に分解・除去して、パーキンソン病、アルツハイマー病などの脳変性疾患、感染症、糖尿病、心疾患、がんなどの病気や老化を防ぐ重要な役割も担っていることが明らかになりました。

現在は、薬剤を用いてオートファジーをコントロールする研究に力を入れており、このオートファジーの"アクセル"と"ブレーキ"の分子レベルの仕組みの解明に取り組んでいます。

永井 信夫先生

様々な病態モデルのマウスを作り、病気解明のための実験動物を利用する方法、特に脳梗塞をメインに研究を進めています。

血管を縛る外科的処置により脳梗塞の障害をマウスに誘導し、病気の原因や脳梗塞発症後の障害が悪化する要因などの解明に努めています。また、学外との共同研究で、動物用CTを使った脳梗塞モデルマウスの撮影に成功。これは世界で初の成功例となりました。

一方で、遺伝子組み換えマウスを使い、分子レベルでの病気の原因やメカニズムの解明もめざしています。固まった血液を溶かすための線溶因子の1つであるt-PAが欠損したマウスに、脳梗塞モデルを適用してその機能を明らかにしました。これらの成果は脳梗塞に伴う脳の障害や神経機能異常の修復につながるのではと期待されています。

河内 浩行先生

脂肪細胞についての学内の共同研究で、さまざまな植物の種子中に抗肥満作用を有する脂溶性成分が含まれていないかスクリーニングしたところ、藤棚で知られるノダフジの種子中に、糖尿病や脂肪肝に効く因子が存在することを発見しました。将来的には、肥満を改善するようなサプリメントや動物の飼料の開発につながるもので、2012年6月の微量栄養素研究会シンポジウムでこの研究成果を発表しました。

また、石川県畜産試験場との共同研究で、能登牛の血液の脂肪細胞分化促進能を評価する系の確立を検討しています。霜降りは筋肉内の血管沿いに入ることから、優れた肉質の肉牛の血からは脂肪細胞分化促進因子がより多く分泌されていることが予想されますので、培養した脂肪細胞に肉牛の血清を添加し分化の割合を評価しています。この研究の進展で屠殺前の牛の血液を調べることで霜降り度合の判別が可能となり、良質な牛肉の持続的な生産に役立つものと期待されています。

和田 修一先生

系統分類学上で脊椎動物に極めて近縁な海の動物、カタユウレイボヤをモデル動物に、遺伝子発現の調節に重要とされるタンパク質ヒストンの修飾を調べ、その機能を研究しています。カタユウレイボヤは脊椎動物と様々な特徴を共有し、発生が非常にシンプルで成長が速く、コンパクトなゲノムを持つことから、ヒストン修飾を研究する上で非常に有用な動物です。

ヒストンは細胞核にDNAを収納する役割を担い、DNAの遺伝情報が働く時に重要な役割を果たします。現在、がん細胞で異常なヒストン修飾が起きている例が多く発表されています。また、人工多能性幹細胞iPS細胞が作られる時にもヒストン修飾に大きな変化が起きることが分かっています。こうしたことから、ヒストン修飾の機能の解明は、がん治療や再生医療に役立つ可能性が高いと期待されています。

「大学案内2012」紹介分

齊藤 修先生

2005年に大学近くの田村山のふもとの側溝で、滋賀県の希少種に指定されているカスミサンショウウオの繁殖地を発見。
生態調査と研究室内で保護のための人工飼育を行っています。

隣接する米原に棲息する小集団、すでに遺伝子の配列が報告されている大津の集団とのミトコンドリア遺伝子の配列を比較した結果、両集団と配列の近いものが認められず、田村山の種はある程度孤立した集団であることが判明、この調査結果を昨年の爬虫両棲類学会で発表しました。

11月には、地元の自治体や教育・医療関係者など幅広い人たちと、「田村山生き物ネットワーク」を結成、地域社会でカスミサンショウウオを保護する活動にも取り組んでいます。

永井 信夫先生

マウスの病態モデルを使い、脳梗塞の大きさがその後の修復のプロセスに影響することを初めて証明、この研究成果を脳神経系科学誌『Brain Research』に発表し、カバーデザインを飾りました。

脳の修復プロセスでは、障害を正常部位から隔離する機能があるアストロサイト細胞が、傷害周囲に正常な血管を形成するうえで重要な役割を果たしていることを解明。また、ES細胞をマウスに移植することで内因性の血管新生が活性化され、修復プロセスを促進させることも突き止めました。こうしたプロセスが明らかになることで、再生医療の発展の基盤となる知見を提供できるものと期待されています。

野村 慎太郎先生

アスベスト(石綿)が原因のがん「悪性胸膜中皮腫」の遺伝子治療で、マウスを使った実験に成功、その研究成果が『International Journal of Center』誌に掲載されました。

この研究は、前任の大阪大学時代から進めてきたもので、細胞内でさまざまな情報伝達を抑えている遺伝子SOC3に注目。胸部に悪性中皮腫細胞を移植したマウスに投与したところ、胸部で作られたSOC3タンパク質ががんの増殖を抑制し、数十匹のマウスでがんの大きさが5分の1に減少したことを確認しました。悪性胸膜中皮腫による年間死亡者は増加の傾向にあり、この研究成果が画期的な治療法の開発につながるものと期待されています。

河内 浩行先生

長浜バイオクラスターネットワーク事業の一環として、「食の安全」に関する研究を行っています。「制限酵素断片長多型解析法(PCR-RFLP)」によるDNA解析で、琵琶湖固有種のビワマスの真贋判定法を確立しました。DNAの抽出から判定まで3時間半の短時間で判定できることが特徴で、判定キットの開発が可能となりました。

もうひとつは、「脂肪細胞」の研究です。エコフィードの流れで、酒粕などの食品製造過程でできる副産物中に、脂肪を増やす脂溶性成分がないかスクリーニングしています。将来的には、ビワマスの脂の乗りを良くする飼料の開発をめざしています。