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第120回バイオセミナーのご案内

第120回バイオセミナーは、奈良篤樹先生のご紹介で、北海道大学薬学研究院・教授の木原章雄先生にお話しいただけることになりました。木原先生は、機能生物化学、スフィンゴ脂質を専門にご研究をされています。

関連他分野のお話を聞ける良い機会ですので、教員、大学院生はもちろん学部学生も多数ご参加ください。

日 時:2015年9月29(火) 15時20分〜16時40分

場 所:命北館4F 中講義室5

講 師:木原 章雄先生(北海道大学薬学研究院・教授)

演 題:スフィンゴ脂質代謝と皮膚バリア形成

スフィンゴ脂質は真核生物の生体膜を構成する主要な脂質の1つであり,皮膚バリア機能,神経機能,免疫,精子形成,血管形成など多彩な生理機能をもつ。講演の前半では,スフィンゴ脂質の皮膚バリア形成における役割について最新の知見を紹介する。スフィンゴ脂質骨格のセラミドは表皮角質層に豊富に存在し,皮膚バリア形成において中心的な役割を果たしている。表皮角質層には多様なセラミド分子種が存在するが,その中でもアシルセラミドは表皮特異的に存在し,皮膚バリア形成に最も重要である。アシルセラミドの合成不全あるいは低下は,魚鱗癬やアトピー性皮膚炎と関連する。我々は最近アシルセラミドの産生機構,表皮のセラミドの多様性を産み出す分子機構を明らかにした 1,2) ので,本講演で発表する。

講演の後半では脂質メディエーターであるスフィンゴシン1-リン酸(S1P)について紹介する。免疫系においてS1PはT細胞の胸腺,二次リンパ組織からの移出過程で重要な働きを示す。近年,S1Pの免疫系における働きが臨床応用され,多発性硬化症の治療薬として用いられていることから注目が集まっている。本講演ではS1Pの生理機能に加え,我々が近年明らかにしたS1P代謝経路と代謝異常に関連する病態(皮膚神経疾患シェーグレン・ラルソン症候群) 3,4) について発表する。

1) Sassa T.et al.:Mol. Cell. Biol.,33, 2787-2796 (2013).
2) Ohno Y.et al.:Proc. Natl. Acad. Sci. USA,112, 7707-7712 (2015).
3) Nakahara K.et al.:Mol. Cell,46, 461-471 (2012).
4) Kondo N. et al.:Nat. Commun.,5, 5338 (2014).