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天然変性領域をターゲットにした創薬をAIで可能に

長浜バイオ大学の白井 剛教授らの研究グループは、これまで創薬の対象としてほとんど活用されてこなかった「天然変性領域(IDR)」を標的にした新しい創薬方法を、AIを用いて実現しました。

天然変性領域(IDR)とは?

タンパク質は通常、決まった立体構造を持ちます。しかし一部には、あえて形をとらずに“ゆらゆら”と柔軟に動いている部分があります。これが「天然変性領域(IDR)」です。
近年、このIDRが生命活動や病気の発症に深く関わっていることが明らかになってきました。実際に、人の病気を引き起こす遺伝子変異の約3割はIDRで起きているといわれています。それにもかかわらず、これまでは扱いが難しく、創薬のターゲットとしては敬遠されてきました。

今回の研究成果

研究チームは、AI(人工知能)を活用し、IDRを標的に薬の候補分子を探索できる新しい手法「IDRdecoder」を開発しました。
このAIは、タンパク質中のIDRがどんな機能を持ち、薬がどこに結合するか、そしてどのような分子構造の薬が効果的かを予測できます。従来の方法と比べても高い精度を示し、特に「薬の分子構造まで予測できる」のは世界初の成果です。

研究の意義

これまで見過ごされてきたIDRを新しい創薬ターゲットとして活用できる道を切り開いたことは、医薬品開発に大きなブレークスルーをもたらします。
創薬研究では「狙いやすい標的(Low hanging fruit)」が減ってきている中、本研究は将来の新薬開発の可能性を大きく広げるものです。

論文情報

掲載誌: Frontiers in Bioinformatics(Frontiers Media S.A.発行)
タイトル:IDRdecoder: A machine learning approach for rational drug discovery toward intrinsically disordered regions(邦訳:IDRdecoder:天然変性領域をターゲットとした合理的創薬のための機械学習アプローチ)
著者:塩生くらら(しおにゅう くらら)1,大森 聡(おおもり さとし)1、平田 昴(ひらた すばる)2、石田裕一(いしだ ひろかず)1、白井 剛(しらい つよし)1,2* (*印は連絡著者)
1.長浜バイオ大学バイオサイエンス学部, 2. 滋賀大学データサイエンス学部
DOI: 10.3389/fbinf.2025.1627836

プレスリリース[PDF]

【本研究に関するお問い合わせ】

長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部
教授 白井 剛(しらい つよし)
E-mail: t_shirai@nagahama-i-bio.ac.jp
TEL: 0749-64-8117