×

抗体医薬品の劣化の初期過程を解明

本学の今村比呂志 助教(フロンティアバイオサイエンス学科)は、抗体医薬品の製造過程で起こる抗体分子の劣化の初期過程を解明しました。

抗体はタンパク質であり、医薬品としても利用されています。抗体を製造するときには、他の分子と分けるためにアフィニティークロマトグラフィーという手法を使います。その際、抗体は酸性溶液にさらされ、変性します。その後、中和によって天然構造になった抗体は医薬品として使用されますが、一部は天然構造になることができず凝集体となります(劣化)。この原因はよくわかっていません。

今回の研究では、凝集体になる前の初期過程(変性構造)を明らかにしました。小角散乱という手法を用いて酸性溶液中の抗体を調べたところ、天然構造とは異なるシグナルがあることに気づきました。その詳細をシミュレーションで解析したところ、変性の際、抗体の天然構造に特徴的な領域間の長距離の規則性(FcとFab, FabとFab; 図を参照)に乱れが生じていることがわかりました。抗体の劣化を防ぐ方法の開発につながることが期待されます。

International Journal of Molecular Sciences (URL:https://doi.org/10.3390/ijms241512042)に掲載されました。

論文名「Cue to Acid-Induced Long-Range Conformational Changes in an Antibody Preceding Aggregation: The Structural Origins of the Subpeaks in Kratky Plots of Small-Angle X-ray Scattering」