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第171回バイオセミナーのご案内

第171回バイオセミナーは、メディカルバイオサイエンス学科助教の保科 亮先生と、10月よりメディカルバイオサイエンス学科に着任された助教の知名 秀泰先生にご講演いただきます。

先生方、大学院生の皆さんをはじめ、学部学生の皆さんも、ご専門の研究分野を問わず多数ご参加ください。

日 時:2020年2月25日(火)1.15時20分~15時50分、2.15時50分~16時40分
会 場:命北館4階 中講義室5

演者・演題
1.保科 亮先生(専門分野 分子進化学、系統分類学、多様性生物学)
「多数の球状緑色藻を保有する原生生物~共生種のシェアリングとインテグレーション~」
要 旨:細胞内共生を通じた葉緑体の並行移動は、真核生物の様々な系統に光合成生物を出現させた。いわゆる二次共生による葉緑体の獲得へと至るステップには、環境中の藻類を取り込み短期的に維持する第一段階、共生藻を継続的に維持する第二段階、共生藻の核が矮小化し、多くの遺伝子が宿主核へ移動する第三段階が提示されている。第三段階にある生物(宿主―共生藻融合体)に関しては、ゲノム構造等を含めた詳細な研究がなされているが、第一、第二段階にあろう生物群に関しては、その実態すらあまりよくわかっていない。淡水環境下では多数の球状緑色藻を保有する原生生物(MARP: Multi-algae retaining protist)を散見する。演者はこのような生物群の、宿主種―共生種の多様性と相互の依存性に関する研究をおこなっている。まだまだサンプル数が少なく、確定的とは言い難い状況であるが、MARPの共生状態に関していくつかの傾向が見えてきている。

2.知名 秀泰先生(専門分野:有機反応化学、酵素化学)
「ハロゲン原子を活用する環境調和型反応の開発」
要 旨:化学なくして「ものづくり」はあり得ない。故に、産業の原動力に化学の発展は不可欠であるが、我々は地球規模の資源・環境問題に大きな課題を背負っている。このような中で近年、環境への影響を考慮しつつ資源の有効利用と循環において持続可能な社会を目指す「グリーン・サスティナブルケミストリー」の思考が有機合成分野で強く意識されており、医薬・化学製品の製造産業では、安全で枯渇資源に依存せず環境にやさしい反応の開発が望まれている。特に、官能基変換や結合形成などの様々な分子変換に寄与する酸化反応においては、多量の廃棄物を残す犠牲試薬が用いられることが殆どであることから、酸素や過酸化水素などのグリーン酸化剤を利用できる反応系や触媒系の構築が求められている。一方で地球上に豊富に存在する塩素、臭素、及びヨウ素などのハロゲン源は、有機化合物の反応性を高める上で重要な元素であり、今後は環境調和を志向したハロゲン原子の高度な利用法が注目される。本セミナーでは、分子変換に重要な酸化と環化に関して、ハロゲン原子を活用する酵素反応や水中反応などの環境調和型反応を解説する。