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魚類の温度センサーの機構解明で 国際ジャーナルに2本の論文を発表

織田 麻衣さん(博士課程後期課程2016年度修了)
齊藤 修先生(アニマルバイオサイエンス学科)

環境変化を素早く感知し、柔軟に適応するため、動物は様々な感覚センサーを獲得しました。中でも、温度変化や酸化ストレス、痛みなどの刺激によって活性化される主要な侵害刺激センサーが、TRPチャネルと考えられています。

2018年1月まで動物分子生物学研究室に所属していた織田麻衣さん(現在、群馬大学医学部博士研究員)と、動物の感覚センサーの機能を研究する齊藤修先生は、陸上に比べて温度環境が安定した水中の棲む魚類に注目し、温度感受性TRPチャネルとして働くTRPA1についての分析を行いました。

ヒトやマウスは10~60度の温度帯で6種類のTRPチャネルを使い分けて温度変化を感じますが、陸上動物が冷たさを感知する受容体のTRPM8を魚はもっていません。織田さんと齊藤先生は、2017年12月発行の『Biochemical and Biophysical Research Communications』で、陸上動物のマウスが冷たさを感知するTRPA1が、メダカでは温かさを感知して機能することを発表。続いて2018年3月発行の『NeuroReport』で、フグのTRPA1が温・冷どちらも感知する両温応答性をもつことを明らかにしています。

さらに織田さんはTRPA1の高温応答で、陸上動物に比べて水生動物の共通特性は何か、更にその機構を解明しようとしており、有能な若手研究者に贈られる日本科学協会の「笹川科学研究奨励賞」を受賞しました。