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第147回バイオセミナーのご案内(9/26)

第147回バイオセミナーは、生物有機化学、糖化学、糖鎖生物学、タンパク質化学がご専門の大阪大学大学院理学研究科・教授の梶原康宏先生にご講演いただきます。
先生方、大学院生の皆さんをはじめ、学部学生の皆さんも、ご専門の研究分野を問わず多数ご参加ください。

日 時 2017年9月26日(火)15時20分~16時40分

会 場 命北館4F・中講義室5

演 者 梶原 康宏先生(大阪大学大学院理学研究科 化学専攻有機生物化学研究室 教授)

演 題 生体高分子糖タンパク質の精密化学合成を利用する糖鎖の機能解明

糖タンパク質の生合成は、小胞体で開始される。リボソームから生産されるペプチドにグルコースが3つ結合したハイマンノース型糖鎖が付加し、そしてこの糖鎖が多数の酵素、シャペロンにより構成される糖タンパク質品質管理機構のタグとして利用されることで、タンパク質部分が正しくフォールディングする。

この過程で、正しくフォールディングした糖タンパク質は、ゴルジ体に送られ、ハイマンノース型糖鎖のプロセッシングおよび酸性の性質を示すシアリル糖鎖への再構築を経て完成品となり、細胞膜や細胞外へと分泌されていく。特に、糖タンパク質が、酸性のシアリル糖鎖を持つことで、血中に分泌された後、その水溶性の向上や、糖タンパク質の凝集の防止、血中寿命、抗原性が制御される。

しかしながら、糖鎖の機能は未だ明確には理解されておらず、糖鎖構造が、糖タンパク質の生合成経路ならびに生理活性発現に与える影響を化学的視点で緻密に調べることは困難であった。これは、糖鎖構造を自在に制御して、任意の糖鎖を持つ糖タンパク質を得ることができなかったことが原因である。

本講演では、アミノ酸166残基からなるエリスロポエチン(EPO)を例に、ハイマンノース型糖鎖が小胞体での糖タンパク質の品質管理機構においてどのように利用されているのか、さらにはシアリル糖鎖が血中でEPOの赤血球増殖活性をどのように制御しているのか、糖タンパク質EPOの精密化学合成を利用して糖鎖の機能を調べたことについて述べる。