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池村淑道客員教授・名誉教授らの研究成果が国際科学誌に掲載されました

本学コンピュータバイオサイエンス学科の池村淑道客員教授・名誉教授らのグループが参加する共同研究により、酸化されたDNA(8-オキソグアニン)がほ乳類の生殖細胞における自然突然変異の主要な原因となることを定量的に明らかにしました。
本研究成果は2014年4月15日10:00(英国夏時間)に、国際学術雑誌Nature姉妹誌のオンラインジャーナル『Scientific Reports』に掲載されました。
8-oxoguanine causes spontaneous de novo germline mutations in mice

九州大学・理化学研究所・長浜バイオ大学共同プレスリリース 2014.04.14.pdf

【教員の紹介】 池村 淑道

2014年5月16日 科学新聞より
酸化した哺乳類のDNA 子孫の遺伝子が変化する原因に 九大など共同で解明

九州大学大学院医学研究院の大野みずき助教、同大生体防御研究所ヌクレオチドプール研究センターの作見邦彦准教授らの研究グループは、理化学研究所バイオリソースセンターの権藤洋一チームリーダーら、長浜バイオ大学の池村淑道客員教授らとの共同研究で、DNA(8-オキソグアニン)が哺乳類の生殖細胞における自然突然変異の原因となることを明らかにすることに成功した。

DNAは、正常な細胞の代謝過程、感染や疾病など生物的ストレス、あるいは放射線や化学物質などの環境ストレスによっても酸化されることは知られている。ただ、1世代あたり1億塩基に1個程度しか生じない生殖細胞の自然突然変異を検出することはかなり難しい。作見准教授によると「これまでに明らかにしてきた『個体においてDNAの酸化が体細胞突然変異や発がんの原因になる』という事実を元に、8-オキソグアニンは生殖細胞自然突然変異の原因であるという仮説をたてました。しかし発生頻度が低く、しかも細胞ごとにDNAの異なる部位で生じた変異を同定することは容易ではありません」という。
研究グループは、酸化したDNA中に生じた8-オキソグアニンを除去、修復できないように遺伝子を改変したマウスを用いて、DNA中に自然に蓄積した8-オキソグアニンに起因する突然変異を解析した。さらにこの遺伝子改変マウスを8世代まで交配を続けて、家系内の各世代で新たに生じた変異を蓄積させ、最も世代の進んだ個体のDNA配列を解析することで、発生した変異を効率的に検出することを可能にした。
これにより、このマウスの家系では、子孫に水頭症や特殊ながんの発生、毛色の変化など遺伝性の表現形質の変化が観測された。また、生殖細胞突然変異が最も蓄積していると考えられる3匹のマウスを選択し、そのDNAのエクソン領域40.9Mbを次世代シークエンサーを用いて解析した。その結果、このマウスでは1世代当たりの生殖細胞突然変異発生率が野生型マウスと比較して約18倍上昇していることが分かった。見つかった変異の99%は、8-オキソグアニンに起因するG-Tトランスバージョンという種類の突然変異で、その約60%は遺伝子の機能に影響を与えるものだった。
作見准教授は「8-オキソグアニンに起因するを修復できない遺伝子改変マウスと次世代シークエンサー解析を組み合わせることで8-オキソグアニンに起因する生殖細胞突然変異がいつ、どこで発生したのかを示すことができました。今後、進化には必須ですが個体レベルでは有害なことが多い生殖細胞突然変異が哺乳動物においてどのようにコントロールされているのかを明らかにしていきたいと考えています」としている。

2014年4月16日 日刊工業新聞より
生殖細胞の自然突然変異 酸化DNA蓄積が原因 九大など

 九州大学の大野みずき助教と作見邦彦准教授らのグループは、理化学研究所、長浜バイオ大学などと共同で、DNA分子の酸化が生殖細胞の自然突然変異の原因になることをマウスによる実験で明らかにした。DNAは環境ストレスなどによって日常的に酸化されるが、通常は修復機構が働いている。これが蓄積した場合、遺伝的な多様性を生み出すとともに、病気など原因にもなると考えられるという。成果は15日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
グループは、DNAを構成する塩基の一つの「グアニン」が酸化して生じる分子「8-オキソグアニン」について、修復機構が働かないように遺伝子を改変したマウスを作製。同マウスの交配を続け、同分子の蓄積が遺伝的な変異にどんな影響を与えるかを調べた。
その結果、同マウスの家系では病気の発生や毛色の変化などが観察された。また、同マウスの生殖細胞突然変異発生率を解析すると、野生型に比べ最大で18倍に上昇することが分かった。