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本学教員らの研究論文がドイツ科学誌”Angewandte Chemie International Edition”に掲載されました

本学バイオサイエンス学科の水上民夫教授、長谷川慎准教授、佐々木隆造客員教授と京都府立医大・鈴木孝禎教授、フロンティアファーマらの共同研究論文がドイツ科学誌『Angewandte Chemie International Edition』に掲載されました。 近年、遺伝子発現を調節するエピジェネティクスの異常が、多くのがんの発生の原因になっていることが明らかになっています。細胞の核内のDNAと結合するヒストンというタンパク質のリジン残基に、メチル基が結合したり外れたりすることで、DNAの構造が変わり、がんを引き起こすスイッチがオンやオフになります。 本研究では、ヒストン脱メチル化酵素と呼ばれるヒストンからメチル基を外す酵素の中で、がん発生の原因となっているLSD1を、選択的に強く阻害し、がん細胞の増殖を抑える化合物を、新規のドラッグデリバリーシステムを考案することにより、創りだしました。 今後、開発した化合物を動物実験で効果や安全性を確かめ、臨床への応用を進めていく予定です。 Ogasawara D, Itoh Y, Tsumoto H, Kakizawa T, Mino K, Fukuhara K, Nakagawa H, Hasegawa M, Sasaki R, Mizukami T, Miyata N, Suzuki T: Lysine-Specific Demethylase 1-Selective Inactivators: Protein-Targeted Drug Delivery Mechanism. Angew. Chem. Int. Ed. http://dx.doi.org/10.1002/anie.201303999 オンライン速報版(7月3日公開) 【教員の紹介】 水上 民夫   長谷川 慎   佐々木 隆造 2013年7月4日 京都新聞より 子宮頸がん・神経芽腫 副作用減の治療薬に道 府立医大と長浜バイオ大 候補物質を開発 子宮頸がんや、小児がんの一つである神経芽腫の治療薬の候補物質を、京都府立医科大の鈴木孝禎教授や長浜バイオ大の水上民夫教授らのグループが開発した。副作用の少ない抗がん剤として期待できるといい、ドイツ科学誌で近く発表する。 子宮頸がんなどでは、遺伝子の働きを調節する酵素LSD1が過剰に生産され、がん細胞の増殖が進む。抗うつ剤のトラニルシプロミンがLSD1に結合して働きを阻害することが分かっているが神経伝達物質を調節する酵素MAOにも結合するため、単体では副作用の恐れがある。 グループは、MAOには結合せず、LSD1だけに結びつく分子を設計、トラニルシプロミンと連結させた。子宮頸がんや神経芽腫の細胞で実験したところ、トラニルシプロミン単体の100分の1以下の少量で増殖を抑えることができた。 鈴木教授は「動物実験で効果を確かめ、臨床応用に進みたい」と話している。