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過去の講演会・セミナー

第113回長浜バイオ大学バイオセミナー


日 時: 2015年3月10日(火) 13時30分~14時50分
場 所: 命北館4F 中講義室5

テーマ:なぜ中年太りするのか? Sirt1による体重調節機構の解析
講 師:群馬大学生体調節研究所代謝シグナル解析分野 准教授
    佐々木 努 先生

【講演内容】
 ヒトでも実験動物でも加齢と共に徐々に太っていくが、その詳細な機序は不明である。中年太りを予防できれば、健康長寿を実現できるのではないだろうか?視床下部は体重調節中枢として若齢時には体重は一定範囲内に制御している。しかし、加齢に伴いこの制御機構が徐々に破綻して「中年太り」が起こる。この中枢性エネルギー恒常性破綻がメタボリックシンドロームや病気につながり、健康寿命が短縮される。
 NAD+依存性タンパク脱アセチル化酵素SIRT1は、カロリー制限による健康寿命の延長効果を担う。我々の研究成果から、視床下部SIRT1の減少・機能低下は加齢と食事性の肥満に共通した中枢性エネルギー恒常性破綻のメカニズムであることが示唆される。その破綻機構を担う候補としてSIRT1の新規ユビキチンE3リガーゼの同定と、破綻の是正のために阻害剤探索を現在行っている。
 これらの研究を通して、中年太りの予防と人類の健康長寿を実現したいと考えている。


佐々木先生は、中枢性摂食代謝調節の専門家で、生理学、神経科学、内分泌代謝学、分子生物学、生化学、遺伝学など様々な手法を取り入れて精力的に研究されています。

第112回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時: 2015年2月24日(火) 15時20分~16時40分
場 所: 命北館4F 中講義室5

テーマ:Srcによるがん形質発現メカニズムの再考
講 師:大阪大学微生物病研究所 発癌制御研究分野 准教授
小根山 千歳 先生

【講演内容】
Srcは最初に同定されたがん遺伝子およびチロシンキナーゼであり、細胞の分化・増殖・生存などを司るシグナル伝達において必須の存在である。c-Srcは多くのヒトがん細胞でその発現・活性の亢進が見られる一方、正常細胞型として存在し自身の遺伝子変異を伴わない。すなわち、c-Srcシグナルの制御系が破綻し異常ながんシグナルの伝達からがん形質の発現に至ると考えられるが、その詳細は未解決である。私たちは、c-Srcの負の制御因子であるCskを欠損したマウス線維芽細胞が、c-Srcによってがん化することを見出し、このモデル系を活用してc-Srcによるがん形質発現の詳細な分子メカニズムを再考してきた。その過程で、細胞膜マイクロドメインである脂質ラフトが、Srcの局在制御を介してがん形質を抑制しているという新しい概念に至った。またリン酸化によるがんシグナル伝達経路の陰に、複数のmicroRNAが協調してSrc関連分子の発現を制御するいわば隠れたネットワークが存在し、その異常ががん形質に深く関与していることを見出した。本セミナーでは、これらのSrcシグナル制御機構とその破綻としてのがん形質について発表する。

小根山先生は、大阪大学大学院理学研究科博士前期課程修了後、協和発酵工業(株)を経て、大阪バイオサイエンス研究所(花房秀三郎研究室)で研究をされていました。がん原遺伝子・がん形質発現・脂質ラフト・microRNAなどがご専門です。

第111回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時: 2014年11月25日(火) 15時20分~16時20分
場 所: 命江館3F 中講義室1

テーマ:近隣剪定法による大量配列情報 リサンプリング
講 師:長浜バイオ大学 コンピュータバイオサイエンス学科
    米澤 弘毅 先生

【講演内容】
近年、様々な遺伝子情報がデータベース上に大量に蓄積されている。このような大量の配列情報は進化学の研究者にとって大変有用であるように思われるが、巨大なデータセットを用いた進化解析は計算時間の面で困難が伴う。しかし、データセットから研究者が恣意的に遺伝子配列を選んで進化解析を行うと、真の結果とは異なる結果になるケースも生じる。また、元のデータセットにサンプリングバイアスが含まれている可能性も指摘されている。この問題に対し、サンプリング密度の濃い部分に存在する配列を適宜取り除くことによってリサンプリングを行う近隣剪定法というアルゴリズムを設計した。
今回のセミナーでは、他のリサンプリングアルゴリズムとの性能比較、インフルエンザウイルスの各遺伝子に対するリサンプリング結果について発表する。また、本手法は病原体ウイルスの配列情報に対して適用することを目的としていたが、Evolutionary Trace解析の際にも有用であったので、その実用例を紹介する。

 

第110回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時: 2014年10月28日(火) 15時20分~16時20分
場 所: 命江館3F 中講義室1

テーマ: γ-グルタミルトランスペプチダーゼの反応機構依存型阻害剤 GGsTopTMの開発と応用
講 師:京都大学 化学研究所 生体触媒化学研究領域 教授
平竹 潤 先生
【講演内容】
グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly, GSH)は、活性酸素種やフリーラジカル、重金属や求電子性薬物など生体異物の解毒に中心的役割を果たす必須の生体成分で、その代謝に関わるγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)は重要な創薬ターゲットである。我々は、GGTの活性中心(Thr 残基)と特異的に反応し、共有結合を形成して酵素を不可逆的に阻害するホスホン酸ジエステル型の反応機構依存的阻害剤を開発した。一連の構造活性相関により、ヒトGGTの活性中心において基質GSHの基質認識に重要な残基の存在を明らかにし、この残基との相互作用をもとに強力な阻害剤GGsTopTMを完成させた。本化合物はヒトGGTに対して高い阻害活性を示し、従来のGGT阻害剤acivicinの120倍以上の活性がある。また、GGT以外の酵素を阻害しないため、毒性がなく安全で確実な実用的GGT阻害剤である。
驚いたことに、GGsTopTMは10 μMの低濃度で、ヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲンやエラスチンの産生を大きく亢進させる興味深い活性があり、細胞増殖促進効果や、紫外線による酸化的ダメージの軽減など、さまざまな生理活性が見いだされた。この効果は、細胞内GSHの一過性低下にともなう酸化ストレスが引き金となって、細胞自身が抗酸化ストレス応答を引き起こした結果と考えられる。 こうした有用な活性をもつGGsTopTMを、新しいコンセプトのアンチエイジング化粧品成分として実用化すべく研究開発を行い、2011年大学発ベンチャー(株)ナールスコーポレーションを設立、「ナールスゲン®」という登録商標で化粧品ビジネスを展開している。
GGTの反応機構をもとにした不可逆的な阻害剤の分子設計、その阻害の特性、安全性や有効性の評価から実用化まで、基礎から応用に至る一連の研究をご紹介する。

第110回バイオセミナーは河合 靖先生のホストにより、生物有機化学、酵素化学、有機合成化学がご専門の京都大学・化学研究所の平竹 潤教授にお越しいただきご講演頂きます。

 

第109回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年9月26日(金)15時20分~17時20分
場 所:命北館4F 中講義室6第109回バイオセミナーは、永井信夫先生のホストにより、ホルモン研究でご活躍中の東京大学大学院・坪井貴司先生、及び、神経可塑性に係る細胞機能に関する研究でご活躍のUniversity of Exeter(英国)のRobert Pawlak先生のお二人にお越しいただき、1時間ずつご講演いただきます。

テーマ1:新規分子スパイプローブによるホルモン分泌機能の可視化解析
講 師:東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系 准教授
坪井 貴司 先生
【講演内容】
開口放出は、膵β細胞からのインスリン分泌や小腸内分泌細胞からのインクレチン分泌など、内分泌細胞がホルモンを分泌する際に用いられる機構であり、「時空間的」に厳密に制御されている。内分泌細胞が、細胞外の環境変化に素早く応答し、適切なホルモン分泌を行うためには、(1)細胞外の環境変化(例えば、血中グルコース濃度変化や管腔内栄養素濃度変化等)を感受し、(2)細胞内へその環境変化情報を伝達し、(3)細胞内に貯蔵されているホルモン分泌顆粒を細胞膜方向へ輸送し、細胞膜と融合させる、という3つの素過程が必要である。しかし、各素過程の詳細な分子メカニズムについては、あまり解明されていないのが現状である。
そこで、私たちの研究室では、内分泌細胞の開口放出における3つの素過程を選択的に可視化解析できる分子スパイプローブを新たに開発し、ライブイメージング可視化解析に取り組んできた。本セミナーでは、この新規分子スパイプローブを用いた可視化解析で新たに分かった内分泌細胞の開口放出制御機構について、議論したい。

テーマ2:The role of amygdala extracellular proteases in controlling anxiety and fear
講 師: Professor  Robert  Pawlak
(Department of Functional Cell Biology, Peninsula College of Medicine and Dentistry, University of Exeter)
【講演内容】
Stress can trigger maladaptive neuronal plasticity and lead to high anxiety. Anxiety disorders affect about 25% of adults at least once in their lives and generate an enormous personal, social and economic burden.
Extracellular proteases such as the tissue plasminogen activator, plasmin or neuropsin are uniquely poised to remodel the neuron-extracellular matrix interface and facilitate fear and anxiety. Two important groups of molecules that are subject to modulation by extracellular proteases are Eph-receptor tyrosine kinases and protease-activated receptors, such as PAR-1.
We found that neuropsin promotes stress-related anxiety in the amygdala by increasing the dynamics of EphB2/NMDA interaction that drives the expression of an anxiety-related gene, Fkbp5. Consistent with this finding neuropsin-deficient mice do not show stress-related EphB2 cleavage, induction of the Fkbp5 gene and stress-induced anxiety.
On the other hand we found, that PAR-1 can either promote fear or protect from it depending on the previous "emotional history" of an animal by dynamically switching its coupling to distinct G-protein coupling partners.
Our findings establish novel neuronal mechanisms linking stress-induced proteolysis in the amygdala to anxiety. These novel pathways open new possibilities for treatment of stress-associated disorders, including various forms of anxiety disorders.

 

第105回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年8月20日(水)15時20分〜16時50分
場 所:命北館4F 中講義室6

テーマ:タマネギの催涙因子合成酵素(LFS)の発見から応用研究まで
講 師:ハウス食品グループ本社株式会社・中央研究所 研究員
今井 真介 先生

【講演内容】
毎年秋に,イグノーベル賞というちょっと笑える研究がテレビで紹介される。2011年のワサビの匂いを使った警報装置は,聴覚障害者や耳の遠い高齢者に危険を察知させるため「嗅覚に働きかける」というコンセプトから開発された装置だそうで,食品会社に勤務する私にとって,ワサビの匂いにこんな使い方があったのかと大いに驚かされた.そんな,イグノーベル賞の化学賞を幸運にも受賞した。人を笑わせるために始めた研究では決してないが,今回の受賞を通してこれまで行って来た私たちの研究の内容を,多くの人に知って貰い,笑って貰い,そして考えて貰える事ができたのは,何よりも嬉しかった。そこで今回の講演では,人に注目して貰えた「新しい視点の研究に気づいたきっかけ」と「実際に行った研究の概要」ならびに,「受賞の連絡から授賞式の後の反響に至るまでの顛末記」を紹介したい。

第105回バイオセミナーは高畑京也先生がホストをされ、ハウス食品グループ本社株式会社中央研究所の今井真介先生をお招きしてお話しいただきます。今井先生は、2002年Natureに発表されたタマネギの催涙因子生成酵素の発見の功績で、昨年イグノーベル賞を受賞されました。

 

第104回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年7月28日(月)15時20分〜16時50分
場 所:命北館4F 中講義室5テーマ:腸内細菌と健康の関わり
講 師:滋賀医科大学医学部消化器内科 教授
安藤 朗 先生

【講演内容】
我々は腸内細菌をそなえることからさまざまな免疫装置とその調節機構を発達させてきた。自然免疫を介して病原菌に対しては速やかな防御機転が誘導されるが、常在菌に対しては非応答性を獲得し恒常性が維持されている。
では、我々が腸内細菌叢をそなえるに至った理由は何なのであろうか?エネルギーホメオスタシスの維持は生命にとって重要だが、食物からのエネルギー獲得において腸内細菌が重要な役割をはたしていることが最近の研究から明らかになっている。腸内細菌がいない無菌マウスに高脂肪、高カロリーの餌をあたえても体重の増加がみられないが、腸内細菌を成立させると急速な体重増加がみられる。腸内細菌はヒトが進化の段階で獲得できなかった食物からのエネルギー摂取にかかわる酵素を備えており、我々は腸内細菌の作用を利用して食物からエネルギーを獲得している。一方、腸内細菌の存在に対して発達した免疫監視機構の破綻が炎症性腸疾患などの病態と考えられている。すなわち、腸内細菌や食事抗原に対して維持されているべき非応答性が破綻し過剰な免疫応答が惹起され腸炎が発症する。特に腸内細菌の重要性は、遺伝子改変マウスに自然発症するIBD類似の腸炎が無菌状態で発症しないことやヒトIBDの好発部位が腸内細菌の豊富に存在する部位と一致することなどから示されている。今回の講演では、腸内細菌と肥満、炎症性腸疾患との関連について解説いたします。

第103回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年6月24日(火)15時20分〜16時40分
場 所:命北館4F 中講義室6テーマ:植物環境応答におけるぺルオキシソームの機能分化とその動態
講 師:基礎生物学研究所 高次細胞機構研究部門 名誉教授
西村 幹夫 先生

【講演内容】
高等植物のペルオキシソームは組織、生育環境条件により、その機能を分化させることが知られている。ぺルオキシソ−ムの形成を担う一群のタンパク質はペルオキシンと呼ばれているが、これらの欠損変異株は致死であることが知られており、ペルオキシソームが植物の生殖・生存に必須の役割を果たしていることを示している。
シロイヌナズナのゲノム解析から300程度のペルオキシソーム局在候補遺伝子が同定され、その多くは機能未知であることからも、ペルオキシソームが脂肪酸分解や光呼吸等、従来知られている機能以上に、多くの機能を担っていることを示唆している。種子の子葉組織の発芽、緑化過程において、ペルオキシソ−ムは糖新生に関与するグリオキシソームから光呼吸に関わる緑葉ぺルオキシソームへ機能転換することが知られている。この機能転換に働く分子機構を明らかにするため、私達はペルオキシソームの形態、機能、局在に関する欠損株をシロイヌナズナから単離して解析を進めている。
今回はペルオキシソーム機能転換に働くプロテアーゼとオートファジーの相互作用、更に、ペルオキシソームの可視化によって明らかにされたぺルオキシソームと他のオルガネラの相互作用を中心に、ペルオキシソームの形成及び分化の動態を紹介したい。

第102回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年6月10日(火)15時20分〜16時40分
場 所:命北館4F 中講義室6第102回バイオセミナーは、前回同様、滋賀医科大学でご活躍されているお二人の先生に30分ずつお話しいただくジョイント形式となります。縣先生はエピジェネティクス、転写因子、染色体等のご研究をされています。また、小島先生は、再生医療と遺伝子治療、糖尿病等のご研究をされています。

テーマ1:抗原受容体遺伝子組換えのエピジェネティックな制御機構
講 師:滋賀医科大学 生化学・分子生物学講座 分子生理化学部門 教授
縣 保年 先生
【講演内容】
私達は、細胞の分化がエピジェネティクスによってどのように制御されるのか興味を持ち、抗原受容体遺伝子の組換えをモデルとして研究を行っています。これまでに、転写の活性化に関与するヒストンのアセチル化によって、クロマチンがオープンになることや、機能的な組換えが片方の染色体に限っておこる対立遺伝子排除と呼ばれる現象において、E2Aという転写因子が鍵となることなどを明らかにして来ました。さらに、E2Aが染色体の高次構造を変化させることによっても組換えを誘導することを見出したことから、新しいエピジェネティックな制御機構として染色体の高次構造変化についてもお話をさせていただきたいと思います。

テーマ2:分子ZIP-CODEを用いた標的化DDSシステムの開発
講 師:滋賀医科大学 生化学・分子生物学講座 再生修復医学部門  教授

小島 秀人 先生

【講演内容】
個別化医療の実現を担う次世代型分子標的薬の開発が急がれています。低分子化合物や抗体製剤は、これまで治療困難とされてきた難病への新しい解決方法を示してきました。しかし、患者ひとりひとりの条件に応じた、よりきめの細かい医療の実現には、薬剤を目的臓器や細胞のみに選択輸送できる汎用性システムの開発が欠かせません。私たちはこのピンポイントで標的細胞のみへと輸送するための方法として、「バーコードや郵便番号のようなものがあれば」と、ファージディスプレーを利用した分子ZIP-CODEによる標的化システムを考えました。ここでは、遺伝子治療や分子イメージングにおける具体例をご紹介させていただき、話題提供とさせていただきます。

第101回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年4月22日(火)15時40分〜17時00分
場 所:命北館4F 中講義室6第101回バイオセミナーは、滋賀医科大学でご活躍されているお二人の先生に30分ずつお話ししていただくジョイント形式となります。
等誠司先生は神経幹細胞の発生、メカニズムなどのご研究をされています。また、依馬正次先生は、繊維芽細胞のiPS細胞への初期化、内部細胞塊のES化の分子機構解明等でご活躍されています。

テーマ1:神経幹細胞から探る精神疾患
講 師:滋賀医科大学 生理学講座統合臓器生理学部門 教授
等 誠司 先生
【講演内容】
私たちは、神経幹細胞に関わるさまざまなことに興味をもって研究しています。神経幹細胞は、自己複製能と多分化能を併せもった未分化な細胞で、胎生期に脳の全ての神経細胞・グリア細胞を産み出すだけでなく、成体の脳でも重要な働きをしていると考えられています。私たち成人の脳でも、記憶に関わる海馬において、毎日700個程度の神経細胞が新たに作られているらしいのです。私たちは、この神経細胞新生が、動物の気分や情動を調節しているという仮説を、マウスやカニクイザルを用いて、検証しようとしています。他にも色々な面白い研究をやっていますので、幾つかをご紹介したいと思います。

テーマ2:多能性幹細胞の未分化性維持および分化制御機構
講 師:滋賀医科大学 動物生命科学研究センター  教授

依馬 正次 先生

【講演内容】
我々の研究室は昨年9月に動物生命科学研究センターに発足した新しい研究グループです。テーマとして、多能性幹細胞の未分化性維持の分子基盤の解明を目的に、Klf5という転写因子を切り口として研究しています。循環器、特に血管がどのようにして階層性を呈する構造へ発生してくのか興味を持って研究しています。また、滋賀医大の動物センターは、非ヒト霊長類であるカニクイザルの全国有数の飼育・研究施設であり、げっ歯類では明らかにすることが出来ない高次脳機能などの研究を行っていく予定です。これらに関して概説させていただきます。

第100回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年3月11日(火)15時40分〜17時00分
場 所:命北館4F 中講義室5
テーマ:エクソソームの差分化法の確立
講 師:公益財団法人 がん研究会 がん研究所
蛋白創製研究部 部長  芝 清隆 先生【講演内容】
「エクソソーム」は細胞が分泌する小胞で、その直径は約100nmぐらいとされている。エクソソームの中には、それを放出する親細胞に由来するタンパク質や核酸が含まれており、これら生体高分子は、エクソソームを取り込んだ細胞の中で機能することが分かっている。すなわち、細胞はエクソソームを介して細胞間コミュニケーションをおこなっており、これが、がんの転移、神経疾患、免疫制御、骨形成などに関わっていることが明らかにされつつある。血液、尿、唾液などのあらゆる体液の中から多量のエクソソームが見つかっており、これらの体液中のエクソソームをうまく利用した新しい診断法、治療法の開発が期待されている。
このように、新しい医療の創成につながる勢いで発展している「エクソソーム」研究であるが、大きさが100nmと小さいために、全体像の把握が容易ではない。エクソソームの「精製」や「定量化」といった基本的な操作においてすらコンセンサスがない状態で、それぞれの研究が何をもって「エクソソーム」としているかも定まっていない。
エクソソーム研究のさらなる発展のためには、「精製」や「定量化」といった基盤部分での技術の確立が急務である。特に、いろいろな細胞から放出されたエクソソームの「ミクスチャー」の中から、特定の細胞(組織)に由来するエクソソームだけを差分化する技術の開発は、エクソソーム医療実現において重要な位置を占める。われわれが進めている、「プログラムバイオ界面を用いたエクソソーム差分化法の開発」を中心に、がん分野におけるエクソソーム利用の可能性を含めて解説する。

第99回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年2月28日(金) 15時40分〜17時00分
場 所:命北館4F 中講義室5
テーマ:幹細胞の3次元培養による神経系組織の自己組織化:その原理と応用
講 師:理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
副センター長  笹井 芳樹 先生【講演内容】
神経系は再生能が低い典型的組織であり、疾病・損傷等による神経細胞欠損には人為的に神経組織を補充する必要が出てくる。私たちの研究室では、「発生の微小環境」を試験管内で再現することで、マウスやヒトES細胞からの特定の神経細胞への分化研究と産生技術開発を行ってきた。
本講演では、ES細胞の立体培養系を用いて、大脳皮質や網膜などの層構造を持った組織の自己組織化について紹介する。ライブイメージング法などを用いて、多細胞間相互作用をあぶり出すことを通して、多細胞集団からの立体組織が構築される仕組みについて議論をしたい。「自己組織化」した複雑なミニ器官は、再生医療、病態研究や創薬などの幅広い医学研究に大きな貢献が期待されている。

第98回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年11月26日(火) 15時20分〜16時40分
場 所:命北館4F 中講義室5
テーマ:再凝集マウス精巣細胞の3次元培養系による精細管様構造の再構築
講 師:熊本大学 理事・副学長 安部 眞一 教授【講演内容】

哺乳類の精巣はチューブ状の精細管とその外側の間組織から成る。精細管内には生殖細胞とその増殖や分化を助けるセルトリ細胞があり、精細管の外側に接して基底膜が、またその外側を筋様細胞が取り巻いている。間組織はホルモン産生のライデイッヒ細胞や血管等から成る。

我々は、マウス精巣形成の機構を調べるために、A型精原細胞までしか存在しない生後6日目の精巣を解離、再凝集させてコラーゲン内に包埋して3次元培養し、細胞の挙動を調べた。その結果、ES細胞の培養に使われるKSR(KnockOut Serum Replacement)を添加すると、内腔を伴う精細管様構造の形成が見られた。

これらの結果は、セルトリ細胞のsortingと極性の同一化、筋様細胞の基底膜への接着、伸展、セルトリ細胞の伸長と分化の機構についてin vitroで調べるモデル系が確立されたと考えられる。

第97回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年10月22日(火) 15時20分〜16時40分
場 所:命北館4F 中講義室5
テーマ:次世代シーケンスから探る眼の多様性と進化
講 師:長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科 小倉 淳 准教授【講演内容】

動物はさまざまな形態や機能をもつ複雑な眼を持っており、こうした複雑な眼がどのように獲得されてきたかは、ダーウィン以来の重要な問題の一つである。また動物における眼の獲得は、感覚器の進化にとどまらず、捕食様式の変化を通じて動物の適応までの形態的混乱を引き起こしカンブリア爆発による生物多様化に寄与したとも考えられている。

眼の形態形成に関わる遺伝子発現ネットワークは脊椎動物を中心に徐々にわかってきたが、眼の形態多様化に関してはほとんどわかっていない。そこで、単眼、複眼、ミラー眼、カメラ眼と様々な形態の眼をもつ軟体動物に着目し、次世代シーケンスを用いた発生過程の眼における比較トランスクリプトーム解析から眼の多様化メカニズムの研究を行っている。

本セミナーでは、Pax6のAlternative splicing様式の収斂進化、Six3/6の消失による発現ネットワーク変化などによる眼の多様化メカニズムに関する研究を発表する。

第96回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年9月24日(火) 16時40分〜18時
場 所:命北館4F 中講義室5
テーマ:DNA配列に規定されるヌクレオソームポジショニングと転写制御
講 師:明星大学 理工学部 総合理工学科 清水 光弘 教授【講演内容】
真核生物のゲノムDNAはヒストン8量体と会合し,ヌクレオソームを基本単位とするクロマチンとして細胞核内に収納されている。クロマチンの構造と機能に関する重要な問題の一つは,ゲノムにおけるヌクレオソーム配置決定のメカニズムである。ヒストンはDNAと非特異的に結合するにもかかわらず,ヌクレオソームはゲノム上でランダムには形成されていない。プロモーター領域などにおいて,特定の位置にヌクレオソームが形成される,いわゆる「ヌクレオソームポジショニング」は,これまでにさまざまな真核生物で見られており,転写制御機構のひとつとして提唱されてきた。現在,ヌクレオソームポジショニングのメカニズムとして,DNA配列,クロマチン関連タンパク質,転写装置などの関与が考えられている。
DNAによるヌクレオソームポジショニングの機構を明らかにする目的で,私たちは真核生物ゲノムに見出されるリピート配列に着目し,出芽酵母ミニ染色体の系を用いてヌクレオソーム形成に及ぼすDNA配列の影響を解析してきた。その結果,in vivoでヌクレオソーム形成を阻害する配列として(A)n•(T)n, (CG)n•(GC)n, (CGG)n•(CCG)n,テロメアリピート(TTAGGG)n, (TG1-3)nを示し,ヌクレオソーム形成を促進する配列として(CTG)n•(CGA)n,(ATTCT)n•(AGAAG)nを示した。一方で,ゲノムでの転写制御にヌクレオソームポジショニングが関与する遺伝子であるa-細胞特異的遺伝子BAR1や誘導性遺伝子PHO5などのプロモーター領域にヌクレオソーム形成を促進または阻害する配列を導入し,ヌクレオソームポジショニングの変化と転写制御との関係を解析している。
本セミナーでは,DNAリピート配列を中心に,塩基配列に規定されるヌクレオソームの形成とその転写制御に及ぼす影響についてお話させていただきます。

第95回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年9月18日(水) 15時00分〜16時15分
場 所:命北館4F 中講義室6
テーマ:オートファジーと細菌の栄養摂取を結びつける新規の細菌分子
講 師:オハイオ州立大学獣医学部 力久 泰子 教授【講演内容】
「ヒト顆粒球性アナプラズマ症」と「ヒト単球性エーリキア症」はマダニによって媒介される人獣共通の感染症であり、重篤な新興感染症の1つとして対応が急がれている。各々の病原菌である Anaplasma phagocytophilum (Anaplasma) とEhrlichia chaffeensis (Ehrlichia)は、リケッチアの仲間であり、白血球に感染する。これらの細菌はアミノ酸の合成と中間代謝に関わる遺伝子の多くを欠くため、増殖のために宿主の栄養を利用する。両細菌は、宿主の細胞質に膜に囲まれた封入体 を形成し、その中で増殖するが、Anaplasma のそれはオートファゴソームに、 Ehrlichia のそれは初期エンドソームに似ている。これらの細菌はtype IV分泌装置を持ち、 Anaplasma はAts-1、Ehrlichia はECH0825 というエフェクタータンパク質を宿主の細胞質に分泌する。細胞質に分泌されたAts-1とECH0825 の一部は、ミトコンドリアに移行して宿主細胞のアポトーシスを防ぐ。エフェクターの一部は封入体膜に戻り、 Ats-1の場合は、オートファジー必須タンパク質のべクリン1と結合して、 ECH0825 ではRab5 とべクリン1と結合して宿主細胞にオートファジーを誘導する。オートファジーで取り込まれた内容物は封入体内に輸送され、封入体内の細菌に栄養が供給される。オートファジーが菌の増殖に重要なことは、オートファジーを誘導させると感染が悪化し、オートファジーを阻害すると増殖が抑えられることから示された。このように、 Anaplasma と Ehrlichia は、宿主細胞を生きた状態に保ちながら、宿主のオートファジー経路を乗っ取り、宿主由来の栄養を獲得して、自身への栄養供給に用いるという巧妙な増殖戦略を持つことが明らかになった。

第91回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年8月6日(火)10時30分〜11時50分

場 所:命北館4F 中講義室5

テーマ:男と女の争い 〜ただし植物編〜

講 師:長浜バイオ大学バイオサイエンス学部 木下 哲 客員教授

 

【講演内容】

 男女の争いは、永遠に解決できない問題とされる。一方で、我々の最大の興味の対象でもあるらしく、男女の問題を扱った番組は視聴率を稼げるとされる(例えば恋愛ドラマやホームドラマ)。また、男女に限らず、絶対に一致しない利害関係が存在する場合、意見の集約は極めて困難のように思える。こうしたジレンマは遺伝子レベルでもおこっているようだ。

本セミナーでは、その一例として、オス由来とメス由来のゲノムがせめぎ合う仕組み、植物におけるゲノムインプリンティングのエピジェネティック制御機構とその生物学的意義に関して紹介し、自然の摂理から我々が何を教訓とできるかを問うてみたい。

第90回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年7月23日(火)15時20分〜16時40分

場 所:命北館4F 中講義室5

テーマ:再生できない動物を再生させる

講 師:京都大学大学院 理学研究科生物物理学教室 阿形 清和 教授

 

【講演内容】

 再生できるプラナリアやイモリを使って、再生の原理を明らかにしてきた。そして、最近やっているのは、再生できる動物と再生できない動物を比較して、再生できない動物がどこで再生が止まっているかを明らかにし、その止まっているステップを遺伝子操作などで乗り越えて、再生できるようにしようというものだ。その第一弾として、尾の断片から頭を再生できないプラナリア(コガタウズムシ)を、再生できるプラナリア(ナミウズムシ)と比較することで、尾断片から頭を再生できるように成功した。再生の原理がわかれば、再生能力を引き出せることを初めて実験によって証明した。次のターゲットは、カエルをイモリと同じように四肢再生できるようにすることだ。

第88回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年5月28日(火) 15時20分〜16時40分

場 所:命北館4F 中講義室5

テーマ:植物オルガネラのダイナミズム ― ペルオキシソームを中心に

講 師:本学バイオサイエンス学科環境生命科学コース  林 誠 教授

 

【講演内容】

 動かないことを選んだ植物は、生育環境の変化に適応しながら生きています。植物の環境適応を支えるメカニズムの一つに、オルガネラの機能変換があります。植物は、環境変化に呼応してオルガネラの機能を柔軟に変化させています。私は、ペルオキシソームに注目して植物オルガネラの機能変換の研究を進めてきました。本セミナーでは、ペルオキシソームを中心に植物オルガネラの多様な機能とその制御を紹介します。
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第86回長浜バイオ大学バイオセミナー

〜iPS細胞を山中先生と共に開発された高橋先生のセミナー〜

日 時:2013年3月26日(火)15時〜16時30分

場 所:命江館3F 中講義室1

テーマ:分化多能性獲得までの道のり

講 師:京都大学iPS細胞研究所 高橋 和利 講師

 

【講演内容】

 「リプログラミング」とは本来細胞が持つエピジェネティックな特性を消去することを示すが、近年では「細胞の運命転換」を示すより漠然とした言葉となってきている。既知因子によってリプログラミングが引き起こせるようになると、次は自由自在に細胞の運命を操ってみたくなる。そのためには個々の役者がどういう役割を果たし、何が起こっているのかを詳しく知る必要がある。

本発表では、体細胞がリプログラミングを受け分化多能性細胞へと変化する過程で、いったいどのようなことが起こっているのかについて最近得た知見を交えて紹介する。

【講師紹介】

 高橋先生は、2012年度のノーベル生理学・医学賞を受賞したマウスとヒトのiPS細胞を世界で初めて樹立した新進気鋭の若手研究者です。先生は、その独創的な研究業績を称えられて、幹細胞研究で優れた業績を上げた若手研究者に贈られる「ニューヨーク幹細胞基金・ロバートソン賞」を日本人で初めて受賞されました。

参考論文:

Takahashi, K., Ynamanaka, S. (2006) Cell, 126, 663-76.

Takahashi, K., et al. (2007) Cell, 131, 861-72.

第84回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年01月22日(火)15時20分〜16時50分

場 所:命江館3F 中講義室1

テーマ:核内受容体PPARγの機能解析によるリガンド・受容体再考

講 師:近畿大学生物理工学部 白木 琢磨 准教授

 

【講演内容】

核内受容体は、性ホルモンやビタミンなどの生体内低分子化合物により直接活性調節される転写因子である。中でも核内受容体PPARγは2型糖尿病治療薬の標的蛋白質として創薬の分野では一世を風靡した。しかし、内在性リガンドに関する知見が限られている点において、オーファン受容体と呼ばれていた。

我々は、内在性リガンドによるPPARγの活性調節機構について、蛋白質科学、バイオインフォマティクス、構造生物学を用いて研究を行い、内在性脂肪酸リガンドが合成リガンドとは異なり、リガンドと受容体が共有結合することで活性化していることを明らかにした。不思議なことに、脂肪酸リガンドだけではPPARγのリガンド結合ポケット内に大きな空間が余ってしまう。そこで、ケモインフォマティクス技術を応用し、このPPARγポケットに作用する新たな内在性リガンドを探索し、セロトニン代謝物を同定した。この新しいリガンドは脂肪酸代謝物と同時に受容体に結合することが可能であり、それぞれ独立して活性制御を行うことを見いだした。

これらの内在性リガンドに関する生化学・構造生物学・インフォマティクスの研究成果に加え、生体におけるメタボローム解析から得られた核内受容体リガンドに関する結果を交え、核内受容体PPARγ機能について議論したい。

第83回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2012年11月27日(火)15時20分〜16時50分

場 所:命江館3F 中講義室1

テーマ:A Subpopulation of Smooth Muscle Cells, Derived from Melanocyte-Competent Precursors, Prevents Patent Ductus Arteriosus

講 師:フランス、キューリー研究所、ヨーロッパ色素細胞学会会長

Lionel Larue 博士

(Directeur de Recherche 1, Group leader in the department U1021 INSERM, UMR3347 CNRS, Curie Institute Orsay)

 

【講演内容】

胎児の心臓では大動脈弓(左心室から全身へと向かう血管)と肺動脈(右心室から肺に向かう血管)を繋ぐ血管(ductus arteriosus:動脈管)があり、肺をバイパスさせる血流路(DA: ductus arteriosus)があります。出生後速やかにこの血管は閉じられるのですが、そうでなければ効率的な血液循環が行えないのは容易に想像でき、実際そのような重篤な疾病(patent ductus arteriosus)が知られています。

仏キューリー研究所のLarue先生は、DAを構成する細胞群の中で、発生の由来を同じくする平滑筋の一部と色素細胞両者の分化プログラムの破綻がこの一因であることを見つけました。Larue先生はヨーロッパ色素細胞学会の会長を務められており、本学で開催される日本色素細胞学会学術大会中に開かれる国際色素細胞会議理事会に出席されますので、この興味深い現象とその機構について講演をお願いしました。

Patent ductus arteriosus is a life-threatening condition frequent in premature newborns but also present in some term infants. Current mouse models of this malformation generally lead to perinatal death, not reproducing the full phenotypic spectrum in humans, in whom genetic inheritance appears complex. The ductus arteriosus (DA), a temporary fetal vessel that bypasses the lungs by shunting the aortic arch to the pulmonary artery, is surrounded by smooth muscle cells of distinct origins (SMC1 and SMC2) and many fewer melanocytes. To understand novel mechanisms preventing DA closure at birth, we evaluated the importance of cell fate specification in SMC that form the DA during embryonic development. Upon specific, Tyr::Cre-driven activation of Wnt/b-catenin signaling at the time of cell fate specification, melanocytes replaced the SMC2 population of the DA, suggesting that SMC2 and melanocytes have a common precursor. The number of SMC1 in the DA remained similar to that in controls, but insufficient to allow full DA closure at birth. Thus, there was no cellular compensation by SMC1 for the loss of SMC2. Mice in which only melanocytes were genetically ablated after specification from their common precursor with SMC2, demonstrated that differentiated melanocytes themselves do not affect DA closure. Loss of the SMC2 population, independent of the presence of melanocytes, is therefore a cause of patent ductus arteriosus and premature death in in the first months of life. Our results indicate that patent ductus arteriosus can result from the insufficient differentiation, proliferation, or contractility of a specific smooth muscle subpopulation that shares a common neural crest precursor with physiological, cardiovascular melanocytes.

第82回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2012年10月23日(火)17時〜18時30分

場 所:命江館3F 中講義室1

テーマ:小胞体の機能と制御のダイナミクス

講 師:京都大学大学院理学研究科生物物理学教室

森 和俊 教授

 

【講演内容】

真核細胞の小胞体に構造異常タンパク質が蓄積する小胞体ストレス、それに対する細胞側の対応 小胞体ストレス応答の生理学的ならびに病理学的重要性が明らかになり、注目を集めている。 出芽酵母では1分子しか存在しない小胞体ストレスセンサー分子が、無脊椎動物では3種類3分子、脊椎動物では3種類5分子と進化と共に数が増している上に、主要分子シャペロンの転写誘導を担うセンサー分子が、無脊椎動物ではIRE1、脊椎動物ではATF6とスイッチしている。小胞体ストレス研究における重要課題にメダカを用いて取り組んでいる我々の最近の研究成果を紹介したい。

第81回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2012年10月22日(月)13時30分〜15時

場 所:命江館3F 中講義室1

テーマ:Peptide epitope based synthetic antigens for vaccines and/or diagnostics

(化学合成によるワクチンおよび診断薬用のペプチドエピトープ)

講 師:Eotvos Lorand University 有機化学科

Professor Ferenc Hudecz (フェレン・フゼツ教授)

Professor Ferenc Hudecz は、ハンガリー科学アカデミー会員、Eotvos Loland Universityの前学長です。現在、Eotvos Lorand University有機化学科教授で、European Peptide Society 会長も務めておられます。

第80回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2012年10月4日(木)16時30分〜18時00分

場 所:命江館3F 中講義室3

テーマ:哺乳類の系統と進化:危機から生まれた哺乳類

講 師:東京工業大学大学院生命理工学研究科

岡田 典弘 教授

 

【講演内容】

レト ロポゾンとはcopy&pasteで増幅する転移因子である。我々はこの中の短い散在性の反復配列SINEを用いて系統関係を決定する方法、所謂SINE法を確立した。我々はこの方法を用いてクジラとカバが近縁であることを確立したが、これは分子進化学のどの教科書にも記載されている有名な発見である。同様にこの方法を用いて、我々は哺乳動物の懸案であった幾つもの系統の問題を解決して来た。北方獣類、アフリカ獣類、貧歯類という有胎盤哺乳類の三つの大きな系統が同時に分岐したということもその一つである。この研究では地質学者の丸山茂徳博士と協同で新しい大陸分断のシナリオを提供している。 さらに新しく発見されたAmnSINE1がCNEの一部を構成するという発見から、SINEがエンハンサー機能を哺乳動物の共通祖先で獲得した種々の例を明らかにした。例えば、あるSINE座位はfgf8のエンハンサーであり、視床の体性感覚野であるバレロイ ドのパターニングに関与するということが示された。別のSINE座位はwint5aのエンハンサーであり、二次口蓋の形成に関与しているということが示されている。このことは、元々機能を持たないSINEが2億5千万年前のP-Tの境界の大絶滅後に危機に際して機能を持ったことを示唆する。この大絶滅の前後から大気の酸素濃度が低下し、その超酸素欠乏状態は二千万年間の持続する。一方、爬虫類と哺乳類は3億1千万年前に分岐したが、かろうじて生き延びた哺乳類や爬虫類の祖先はこの厳しい環境を生き延びる為の適応を強いられた。特に我々哺乳類の祖先は、低酸素状態により良く適応した爬虫類の祖先に昼の世界を奪われたため、夜行性として生きることに対する適応をも強いられたと考えられる。低酸素濃度や夜行性に適応する必要から、哺乳動物の共通祖先では多くのレトロポゾンが新たに機能を持ったと考えられる。

第76回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2012年6月26日(火) 15時20分〜16時40分

場 所:命北館4F中講義室5

テーマ:新しい植物ホルモンを探す

松林 嘉克 教授 (基礎生物学研究所 細胞間シグナル研究部門)

 

高等植物における短鎖分泌型ペプチドホルモンの中には、翻訳後修飾を受けることで本来の活性を示すものが少なくありません。そのため翻訳後修飾酵素遺伝子の破壊株の表現型は、その支配下にある修飾ペプチドホルモンの欠損を反映したものとなります。

例えば、チロシン硫酸化に関わる酵素(TPST)の遺伝子を破壊したシロイヌナズナ植物体(tpst-1)では、根端の幹細胞が維持されず、メリステム活
性が顕著に低下します。こうした表現型に着目することで、新しいペプチドホルモンの存在が明らかになり、それらを探し出すことも可能になります。
RGF(root meristem growth factor)の発見を例に、ホルモン探索のおもしろさを紹介します。

第75回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2012年6月11日(月)15時10分〜16時40分

場 所:命江館3F中講義室2

テーマ:亜鉛シグナル:細胞機能と病態形成に関わる新しいシグナル伝達機構

独立行政法人理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター

サイトカイン制御研究グループ 上級研究員

深田 俊幸 先生

 

【講演内容】

亜鉛は生命活動に必要な微量元素であり、その代謝異常は「亜鉛欠乏症」を初めとする様々疾患の原因となる。1960年代に発見されたこの「亜鉛欠乏症」
が契機となって亜鉛の生理機能に関する関心が高まり、現在までに細胞機能における亜鉛イオンの多様な関与が示されている。

本セミナーでは、細胞機能と病態形成に関わる新しいシグナル伝達機構である『亜鉛シグナル』について紹介する。さらに、「亜鉛トランスポーターを介する亜鉛シグナルは選択的に標的分子を制御する」という概念:"亜鉛シグナル機軸"について議論する。

第77回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2012年7月24日(火)16時50分〜18時20分

場 所:命江館2F 中講義室1

テーマ:遺伝子が伸びていく疾患

講 師:東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻

石浦 章一 教授

 

【講演内容】

遺伝子が伸長することによって起こる疾患が興味を集めている。それらは世代を経るに従って重篤化するという特徴がある。その典型例がトリプレットリピート病で、翻訳領域中の3塩基が伸長してハンチントン病のような重篤な神経細胞死を伴う疾患を引き起こす例が知られている。また、非翻訳領域中の数塩基が伸長して筋強直性ジストロフィーのようなスプライシング異常を起こすものもある。今回は、これらの実験モデルの作成と薬物による治療について最新の知見をお話ししたい。