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田村山生き物ネットワーク

地域の人達と一体となってカスミサンショウウオを守る
田村山生き物ネットワーク

本学の齊藤修先生が会長を務める「田村山生き物ネットワーク」が、2014年3月、優れた地域環境保全活動をたたえる「しが生物多様性大賞」で初の大賞に輝きました。受賞した田村山に生息するカスミサンショウウオの保護活動の取り組みを紹介します。

嘉田滋賀県知事より表彰を受ける

学習会で調査結果を報告

地域の人たちと力を合わせた保護池作り

「田村山生き物ネットワーク」は、滋賀県では絶滅危惧種の3番目に指定されている小型のカスミサンショウウオを中心に、田村山周辺に生息する動植物を次世代に残したいと、本学の齊藤修先生が立ち上げ、学生たちも参加する保護組織です。
2005年に田村山の水路で卵が発見され生態と遺伝子系統の調査を進めましたが、2009年に水路の水が枯れて幼生5000匹が全て死滅してしまいました。このことから、齊藤先生が地域住民や自治会、企業等に声をかけて、このユニークなネットワークが発足しました。
最初の取り組みは、水路が枯れないよう水を足しに行くことでしたが、1tの水が2日でなくなるという厳しい状況で、2011年には溝の修復も試みましたが効果なし。その後、長浜市の援助を受けてポンプが設置され、現地まで水を運ぶ手間がなくなりました。
また、卵や幼生を食べてしまうザリガニを人海戦術で除去し、人に対しては「採集しないように」と看板も設置しました。「最初のうちは住民の方々が勝手に採取しに来る不審者に注意してくださったり、連絡をいただいたりしていましたが、今ではそういった心配はなくなりました」と齊藤先生は笑います。
もっと広く知ってもらい、地域の方に活動を理解してもらおうと学習会も開催。「もともとカスミサンショウウオの存在を知っていた人も、学習会で意識高く見守ってくださるようになったことは、とても意義のあること」だと感じています。

さらに、次世代に繋いでいくため、特に教育機関の協力を仰ぎ、現在は虎姫高校や米原高校の生物部も調査しながら保護活動に参加しています。
2011年には、須磨水族館からの助成で大学敷地内に半野生の実験池を作り、研究室で飼っていたカスミサンショウウオと卵を放流。より良い環境の調査を開始しました。
2013年の12月には、本学の学生をはじめ高校生や地域の方が協力して、新たな保護池を設置するまでに至り、その取り組みが高校生新聞やケーブルテレビなどで紹介されました。
「私たちの活動を知り、滋賀県外からも手伝いに来ていただくので、例えばそれぞれの地域のタナゴやメダカを守ろうという意識にも繋がっていると感じています。
今後は、サンショウウオが保護池に定着することを願いながら、保護池周辺を自然公園化して学習する場にできれば、というのが私の希望です」と齊藤先生は話します。