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第84回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年01月22日(火)15時20分〜16時50分

場 所:命江館3F 中講義室1

テーマ:核内受容体PPARγの機能解析によるリガンド・受容体再考

講 師:近畿大学生物理工学部 白木 琢磨 准教授

【講演内容】

 核内受容体は、性ホルモンやビタミンなどの生体内低分子化合物により直接活性調節される転写因子である。中でも核内受容体PPARγは2型糖尿病治療薬の標的蛋白質として創薬の分野では一世を風靡した。しかし、内在性リガンドに関する知見が限られている点において、オーファン受容体と呼ばれていた。
 
我々は、内在性リガンドによるPPARγの活性調節機構について、蛋白質科学、バイオインフォマティクス、構造生物学を用いて研究を行い、内在性脂肪酸リガンドが合成リガンドとは異なり、リガンドと受容体が共有結合することで活性化していることを明らかにした。不思議なことに、脂肪酸リガンドだけではPPARγのリガンド結合ポケット内に大きな空間が余ってしまう。そこで、ケモインフォマティクス技術を応用し、このPPARγポケットに作用する新たな内在性リガンドを探索し、セロトニン代謝物を同定した。この新しいリガンドは脂肪酸代謝物と同時に受容体に結合することが可能であり、それぞれ独立して活性制御を行うことを見いだした。
 
これらの内在性リガンドに関する生化学・構造生物学・インフォマティクスの研究成果に加え、生体におけるメタボローム解析から得られた核内受容体リガンドに関する結果を交え、核内受容体PPARγ機能について議論したい。