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琵琶湖固有魚介類(ビワマスなど)の真贋判定法の確立

 

河内先生トリミング.jpgのサムネール画像

長浜バイオ大学では滋賀県から科学技術重点研究テーマ調査として『水産資源活用プロジェクト構築に向けての可能性調査研究』の研究委託を受け、その一環として琵琶湖固有魚介類の真贋判定技術の研究を実施しました。
 滋賀県の貴重な水産資源である琵琶湖固有魚介類としてはビワマスをはじめ、アユ、ホンモロコ、ニゴロブナおよび瀬田シジミなどがよく知られています。これらの地域特産品の産業化を推進する上では、産地偽装や同類他種使用などの無いよう消費者に対する「食の安心と安全」を確保して提供する必要があります。
 長浜バイオ大学の河内浩行准教授(バイオサイエンス学部アニマルバイオサイエンス学科)と研究室の4回生が、制限酵素断片長多型解析法(PCR-RFLP)によるミトコンドリアDNAの塩基配列を解析することにより、魚介類の真贋判定法の開発研究をビワマス、ニゴロブナおよび瀬田シジミを対象として実施しました。

2010年7月14日 毎日新聞より
 ビワマスなど琵琶湖固有魚介類の真贋判定法を研究していた長浜バイオ大(長浜市田村町)バイオサイエンス学部の河内浩行准教授(43)=食品分子機能学=らの研究グループが、ビワマスなどのDNAを解析して琵琶湖産か否かを見分ける新たな分析法を開発した。今後、ニゴロブナや瀬田シジミなどに研究対象を広げる予定で、河内准教授は「琵琶湖ブランドと偽る産地偽装商品や他種使用の発覚・防止に役立てたい」としている。
 河内准教授らは昨年12月、県の委託で研究をスタート。「制限酵素断片長多型解析法(PCR-RFLP)」と呼ばれる判定法で、ビワマスやヤマメ、アマゴなどからDNAを採取。DNAの塩基配列を切断する「制限酵素」を注入し、切断の長さや切れ具合などを比較することでビワマスの真贋を突き止めた。ニゴロブナや瀬田シジミについてはDNA配列のデータを登録してから同判定を順次行う予定。真贋の結果が出るまで約3時間半で、河内准教授は「この判定法を使えば、琵琶湖産かそうでないか短時間で分かる。産地偽装の商品の出回りを防ぐことにも役立つのでは」と実用化に期待している。

2010年7月20日 京都新聞より
 長浜市の長浜バイオ大食品分子機能学研究室(河内浩行准教授)がこのほど、琵琶湖固有種の「ビワマス」の真贋をDNAから判定する方法を確立した。現在、ニゴロブナやホンモロコ、セタシジミについても判定法の確立を進めている。
 判定法の研究は、滋賀県の貴重な水産資源である琵琶湖固有魚介類の産地偽装などの調査や防止を目的に、昨年秋から県との連携事業の一環として、取り組んでいる。
 産地偽装などの調査でも使う「制限酵素断片長多型解析法」を応用。特定のDNAを特殊な制限酵素で切断して、その断片を電気泳動にかけて長さを比較し判定するという。
 研究ではビワマスとサツキマス、サクラマス、ニジマスの4種類を、この方法で判定。この結果、4種類とも切断のパターンが異なり、種類の特定が可能と分かった。
 河内准教授は「加工してあっても判定ができる。どの種類でも理論的に判定は可能で、短時間で判定できる。滋賀の食の安心と安全に役立ちたい」と話している。

2010年7月22日 朝日新聞より
 琵琶湖の魚介類の偽装食品が出回るのを防ごうと、長浜バイオ大学(長浜市)の河内浩行准教授(43)=食品分子機能学=の研究室が、固有種のビワマスと表示する食品が本物かどうかを見分ける方法を確立した。今後はニゴロブナや瀬田シジミなどの食品についても研究開発していく予定で、琵琶湖の「食の安心・安全」の向上が期待される。
 県の委託を受けた研究で、コメや食肉などの食品偽装を見分けるために使う「制限酵素断片長多型解析法」(PCR-RFLP)を応用。ビワマスの真偽を確かめる場合、食品から抽出したDNAを増やし、「制限酵素」を加え反応させる。DNA配列は一定のパターンで切断され、断片のサイズの違いを解析することによって、本物のビワマスかどうか見分けられる。
 この判定法を使えば、ビワマスと偽って、遺伝子的によく似ているサツキマス(アマゴ)やサクラマス(ヤマメ)などを使って製造した食品でも、正確に判別することができるという。
 河内准教授は、「将来実用化されて、産地偽装の抑止力になり、琵琶湖の特産品の安全・安心の確保につながれば幸いです」と話している。

2010年8月1日 中日新聞より
<湖国2010>産地偽装を防ぐ抑止力に
 偽装もこれで撃退―。琵琶湖の固有種で美味として知られるビワマスと同類魚種を見分ける判定法が、長浜バイオ大(長浜市)の河内浩行准教授(43)=食品分子機能学=の研究室によって確立された。県内では湖産魚介類を特産品にする取り組みが進んでおり、判定法は偽物の横行を防ぐのに一役買いそうだ。
 「ほら、一目瞭然でしょ?」。河内准教授はパソコンを指さした。画面には縦四列に並んだ白い複数の横線。線の位置はどの列も、やや異なっている。「これは遺伝子の違いなんです」
 判定法は、一般的に使われている解析方法を応用した。遺伝子配列を解明した対象に、遺伝子を切断する酵素を注入。切れる位置は魚の種類で決まる法則性があるため、切断されたサイズで区別できる。河内准教授が示した画面にはビワマス、サツキマス、サクラマス、ニジマスの中ではビワマスが切断された遺伝子のサイズが最も大きいことが示されていた。
 ビワマスはサケ科の淡水魚。臭みが無い上に脂が乗り、琵琶湖の魚で最もおいしいとの評価もある。県水産課によると、近年の漁獲量は二十トン前後で地元消費が主。が、五年前に県水産試験場が養殖実現化に成功するなど安定供給のめどが立ち始め、ブランド化して売り出す動きが高まっている。
 人気商品として需要が増えれば、起きうるのが産地偽装だ。ビワマスは知名度が高いとはいえず、孝橋賢一副主幹は「似た魚を見せられても分からない恐れが高い」と指摘する。
 そこで水産資源としての湖魚の可能性を探っている県新産業振興課が昨年、長浜バイオ大に研究を委託した。河内准教授は牛海綿状脳症(BSE)が問題になった際、肉骨粉が飼料に含まれているか調べる検査法を開発しており、その実績が買われた。
 今回確立した判定法の強みは、遺伝子が抽出できれば調査可能な点だ。調理されて外観では識別不能でも三〜四時間で正体を突き止められる。ビワマスのほか同類魚種のサツキマス、ニジマス、サクラマスの三種類も判別できる。
 研究室は今後、同じ琵琶湖固有種のニゴロブナやセタシジミ、ホンモロコでも判定法の確立を目指す。河内准教授は「産地偽装を防ぐ抑止力になれば」と話し、新産業振興課の川原学副主幹は「活用の仕方はこれからだが、有効に使いたい」と将来性に期待を寄せている。