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第104回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2014年7月28日(月)15時20分〜16時50分
場 所:命北館4F 中講義室5

テーマ:腸内細菌と健康の関わり
講 師:滋賀医科大学医学部消化器内科 教授
     安藤 朗 先生

【講演内容】
 我々は腸内細菌をそなえることからさまざまな免疫装置とその調節機構を発達させてきた。自然免疫を介して病原菌に対しては速やかな防御機転が誘導されるが、常在菌に対しては非応答性を獲得し恒常性が維持されている。
 では、我々が腸内細菌叢をそなえるに至った理由は何なのであろうか?エネルギーホメオスタシスの維持は生命にとって重要だが、食物からのエネルギー獲得において腸内細菌が重要な役割をはたしていることが最近の研究から明らかになっている。腸内細菌がいない無菌マウスに高脂肪、高カロリーの餌をあたえても体重の増加がみられないが、腸内細菌を成立させると急速な体重増加がみられる。腸内細菌はヒトが進化の段階で獲得できなかった食物からのエネルギー摂取にかかわる酵素を備えており、我々は腸内細菌の作用を利用して食物からエネルギーを獲得している。一方、腸内細菌の存在に対して発達した免疫監視機構の破綻が炎症性腸疾患などの病態と考えられている。すなわち、腸内細菌や食事抗原に対して維持されているべき非応答性が破綻し過剰な免疫応答が惹起され腸炎が発症する。特に腸内細菌の重要性は、遺伝子改変マウスに自然発症するIBD類似の腸炎が無菌状態で発症しないことやヒトIBDの好発部位が腸内細菌の豊富に存在する部位と一致することなどから示されている。今回の講演では、腸内細菌と肥満、炎症性腸疾患との関連について解説いたします。