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第96回長浜バイオ大学バイオセミナー

日 時:2013年9月24日(火) 16時40分〜18時
場 所:命北館4F 中講義室5
テーマ:DNA配列に規定されるヌクレオソームポジショニングと転写制御
講 師:明星大学 理工学部 総合理工学科 清水 光弘 教授

【講演内容】
 真核生物のゲノムDNAはヒストン8量体と会合し,ヌクレオソームを基本単位とするクロマチンとして細胞核内に収納されている。クロマチンの構造と機能に関する重要な問題の一つは,ゲノムにおけるヌクレオソーム配置決定のメカニズムである。ヒストンはDNAと非特異的に結合するにもかかわらず,ヌクレオソームはゲノム上でランダムには形成されていない。プロモーター領域などにおいて,特定の位置にヌクレオソームが形成される,いわゆる「ヌクレオソームポジショニング」は,これまでにさまざまな真核生物で見られており,転写制御機構のひとつとして提唱されてきた。現在,ヌクレオソームポジショニングのメカニズムとして,DNA配列,クロマチン関連タンパク質,転写装置などの関与が考えられている。
 DNAによるヌクレオソームポジショニングの機構を明らかにする目的で,私たちは真核生物ゲノムに見出されるリピート配列に着目し,出芽酵母ミニ染色体の系を用いてヌクレオソーム形成に及ぼすDNA配列の影響を解析してきた。その結果,in vivoでヌクレオソーム形成を阻害する配列として(A)n•(T)n, (CG)n•(GC)n, (CGG)n•(CCG)n,テロメアリピート(TTAGGG)n, (TG1-3)nを示し,ヌクレオソーム形成を促進する配列として(CTG)n•(CGA)n,(ATTCT)n•(AGAAG)nを示した。一方で,ゲノムでの転写制御にヌクレオソームポジショニングが関与する遺伝子であるa-細胞特異的遺伝子BAR1や誘導性遺伝子PHO5などのプロモーター領域にヌクレオソーム形成を促進または阻害する配列を導入し,ヌクレオソームポジショニングの変化と転写制御との関係を解析している。
 本セミナーでは,DNAリピート配列を中心に,塩基配列に規定されるヌクレオソームの形成とその転写制御に及ぼす影響についてお話させていただきます。