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[2014年6月20日 朝日新聞] 人工池で「絶滅」救え カスミサンショウウオ 卵放流 長浜で市民団体 学生も協力 数百匹 もうすぐ陸に

 国の絶滅危惧種になっているカスミサンショウウオを、人工池で生育する計画が長浜市の田村山で動き出した。湿地を好む生態にあわせて市民団体が池をつくり、卵を放流。成長して山に帰っていく様子を見届け、生態の研究にもつなげたい考えだ。

 カスミサンショウウオは西日本に分布する10〜20センチの小型のサンショウウオ。両生類で幼生は水中で暮らし、成長すると陸上で過ごす。川辺や水田など湿地を好むが、詳しい生態は分かっていない。
 計画を進めているのは長浜市の動植物保護団体「田村山生き物ネットワーク」(約70人)だ。
 会長の斉藤修・長浜バイオ大学教授(55)=分子生物学=は5年前、田村山の水路で約5千匹のカスミサンショウウオの幼生が死んでいるのを見つけた。「このままでは絶滅してしまう」と学生や知人に呼びかけ、2010年に団体を結成した。干上がった水路に水を注いだり、年1回地元の高校生ら向けに学習会を開いたりして保護を呼びかけてきた。
 だが水路に水を足してもすぐに干上がってしまった。産卵しても、孵化して成長できる場がなくなる危機感から、池づくりを始めた。
 会員の建設会社会長を中心に、地主を説得して田村山のふもとに土地を確保。昨秋から重機で穴を掘り、防水シートを敷いた。12月、地元の高校や同大学の生徒ら約80人が手作業で石を積み、長径約3メートル、短径約2メートル、深さ30〜40センチの池をつくった。
 産卵時期の2月に付近の水路で卵1万個を集め、4月に池に放した。その直後からかえり始め、4月下旬に1.5〜2センチだった体長は、6月初旬には3センチ程度に成長した。7月下旬にはうち数百匹が陸にあがるとみられる。
 同大学バイオサイエンス学科4年の井戸綾乃さん(21)は、人工池でのカスミサンショウウオの生態サイクルを卒業研究のテーマに選んだ。週1回エサのイトミミズをやり、成長の様子を記録している。「守りたいという気持ちだけ。早く上陸する姿を見たい」と話す。
 斉藤教授は「生息地を100年後まで残っていくように守らなければ意味がない」と話し、各地に応用できるよう池で順調に生育するか調査を進める。
 同会の松居繁隆事務局長(69)は「自分たちの周りに、守らなければならないものがあることに気づいてほしい」と話し、今後もさらに地元と協力しながら保護に努めたいとしている。