「ビワマス」の飼料開発 美味しさと地域産業の両立
未利用資源が「琵琶湖の宝石」を育てる! 科学で叶える究極の美味しさ
滋賀県が世界に誇る琵琶湖。そこには「ビワマス」という、琵琶湖にしかいない幻の魚が住んでいるのをご存知ですか? サーモンのような美しい身と上品な脂のりが特徴で、「琵琶湖の宝石」とも呼ばれています。 しかし、天然のビワマスは数が減っており、養殖しようにも「天然ほど脂がのらない」「エサ代が高すぎる」という大きな壁がありました。この難題を、最先端のバイオテクノロジーと「逆転の発想」で解決したのが、河内浩行教授の研究です。

美味しさの秘密は「脂をのせるスイッチ」にあった
どうすれば美味しい魚を育てられるのか?
河内浩行教授は、もともと牛の「霜降り肉」を分子レベルで研究していたスペシャリストです。その知識を魚に応用し、細胞の中にある「脂を乗せるスイッチ(遺伝子の働き)」を見つけ出しました。
このスイッチを上手に押してあげれば、魚の筋肉にバランスよく良質な脂が乗ります。では、何を食べさせればそのスイッチが入るのでしょうか。ここからが長浜バイオ大学ならではの「地域密着」の面白いところです。
河内教授が目をつけたのは、なんと地元のお醤油メーカーやビール醸造所から出る「搾りかす(産業廃棄物)」でした。

ビワマスへの餌やりの様子
廃棄物をごちそうに変える、驚きのサーキュラーエコノミー
普通ならお金を払って捨てられてしまう「醤油油」や「ビール粕」。調べてみると、これらの中にビワマスの「脂を乗せるスイッチ」を強力に押す成分がたっぷり含まれていることが分かりました。 これをエサに混ぜて育てたところ、驚くべき結果が出ました。天然ものに負けないぐらい最高の脂が乗ったのです。捨てられるはずだったものが、魚を美味しくし、地域の価値を高める、まさに環境と産業が、同時に回り始めました。しかも、成長スピードも格段に上がり、あっという間に出荷できるサイズに育ちました。
こうして誕生したのが、「ビワトロマス」です。

餌の違いで成長に大きな差が出ました
高校生の皆さんへ 教室での学びが、食卓のメニューを変える
地元の廃棄物を減らしながら、美味しくて価値のある特産品を生み出す。これはSDGsが目指す「環境に優しい循環型の社会(サーキュラーエコノミー)」のまさに理想形です。
河内研究室の学生たちは、実際に養殖場へ足を運び、魚の成長を見守り、大学内で試食会を行っています。「なぜ美味しいのか」を科学で解き明かし、それを自分たちの手で社会に届ける。大学での学びは、研究室の中だけにあるわけではありません。 地域と関わり、産業とつながり、「美味しい」を科学する。そんな道も、実際にあります。
研究が実際の食卓のメニューを変えていくダイナミズムを、あなたも長浜で体験してみませんか?

食味試験の様子