絶滅危惧種を救う ヤマトサンショウウオ保全活動
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研究の醍醐味
遺伝子解析により、彼らが「30度」で苦痛を感じることを科学的に証明。感情論ではなく「守るべき環境条件」をデータで示し、クラウドファンディングや地域との連携で実際の保護池作りまで繋げる一連の行動力にあります。
研究の先に描く未来
バイオ技術を「声を上げられない命」のために使い、世代や立場を超えた人々が共に環境を守る優しい社会を構築。科学の力で絶滅の危機を回避し、地域の豊かな生物多様性を次世代へ確実に引き継ぎます。
絶滅危惧種サンショウウオを救う、
科学と地域の絆
長浜バイオ大学のすぐ裏手にある緑豊かな田村山。ここには、ひっそりと暮らしている絶滅危惧種がいることを知っていますか。その名はヤマトサンショウウオ。
「彼らを守りたい」。その純粋な思いから始まった齊藤修客員教授の保全プロジェクトは、単なるボランティア活動ではありません。ミクロな遺伝子の研究と、インターネットを活用した資金調達、そして地域を巻き込んだ泥臭い活動が見事に融合した、次世代につなぐ環境保護モデルです。
ヤマトサンショウウオ
科学が示した「保護する理由」:
サンショウウオにとっての「30度」は
危険信号だった
なぜヤマトサンショウウオは数が減っているのでしょうか? そのヒントは、彼らの「温度の感じ方」にありました。
齊藤教授の研究グループは、サンショウウオの遺伝子を解析し、彼らが温度を感じるセンサーの仕組みを突き止めました。人間は43度くらいのお湯に触れると「熱い!痛い!」と感じますが、なんとヤマトサンショウウオは「約30度」で火傷のような痛みを感じてしまうことが科学的に証明されたのです。
地球温暖化や森林伐採で地面の温度が少し上がるだけで、彼らにとっては耐え難い苦痛の世界になってしまいます。この発見は、「かわいそうだから守る」という感情論を超え、「命の生存権を守る」ための強力な科学的根拠となりました。
水路から幼生を救出
ネットで資金を集め、
長靴で泥にまみれて池を作る
「科学の力で彼らの危機を証明できた。次は行動だ」。齊藤教授と学生たちは、「クラウドファンディング」に挑戦し、全国から約165万円の支援を集めることに成功しました。
その資金を使い、学生たちは地元の小学生や住民の方々と一緒に長靴を履き、泥だらけになって安全な人工の保護池を作りました。また、サンショウウオの卵を食べてしまう外来種(アメリカザリガニ)を、バケツリレーで水を抜きながら手作業で何十匹も捕獲しました。オンラインでの全国からの資金集めと、汗水流すフィールドワークが見事に連携しているのです。
地域の方と一緒にバケツリレー
●高校生の皆さんへ
理系の知識は、
優しい社会を作る武器になる
「自分が感じている30度と、他の生き物が感じている30度は違う」。科学を通じてこの事実を知ることは、自分とは違う他者への深い優しさや想像力を育てることに繋がります。
大学で学ぶ理系の知識は、声をあげられない命の代わりに、科学の力で状況を伝え、人と人をつなぎ、行動を生み出す。そんな役割を果たすこともできます。長浜バイオ大学では、研究・地域・教育がひとつにつながった学びが進んでいます。ここ田村山で続く、小さなサンショウウオを守る取り組みもその一つです。その一歩一歩の学びが、未来の環境を支える力になっています。