畑の“善玉菌”で植物の病気を防ぐ/長浜バイオ大学が事業管理機関を務める研究開発が国の支援事業に採択されました
長浜バイオ大学(学校法人関西文理総合学園)が事業管理機関を務める研究開発計画「生物学的防除に長けた土壌微生物から成る微生物製剤とそれを用いた植物土壌病害の防除技術の研究開発」が、経済産業省・中小企業庁の「令和8年度 成長型中小企業等研究開発支援事業(通称:Go-Tech事業)」に採択されました。
本事業は、中小企業等が大学と連携して行う研究開発を最長3年間支援する国の制度です。今回のテーマでは、土の中にすむ“善玉菌”の力を借りて、農作物を病気から守る新しい技術の実用化を目指します。
世界の食料生産を脅かす「土壌病害」
気候変動に伴う気温上昇や異常気象は、世界的な食料危機のリスクを高めています。中でも見過ごせないのが、作物の収量を大きく減らす「植物病害」です。世界平均で収穫量の1〜2割程度が病害によって失われているとされ、なかでも土の中の病原菌が原因となる「植物土壌病害」は、一度発生すると防ぎにくく、同じ畑で同じ作物を作り続けられなくなる「連作障害」の主な原因にもなっています。
現在は、土壌燻蒸消毒などの防除技術が広く活用されています。一方で、環境負荷の低減や土壌生態系への配慮など、持続可能な農業の実現に向けた新たな防除技術の開発も求められています。本研究では、有用な土壌微生物を活用した防除技術の実用化を目指します。


自然が作り上げた「発病抑止土壌」を手本に
自然界には、特別な対策をしなくても植物土壌病害がほとんど発生しない「発病抑止土壌」と呼ばれる特殊な土が存在します。これは、病原菌をやっつける力に優れた微生物(善玉菌)が土の中で優勢になり、自律的に病気を防いでいると考えられています。本事業では、この自然界の防除の仕組みをヒントに、環境負荷の少ない新しい防除技術の確立を目指します。
研究グループは、滋賀県内で50年以上にわたり植物土壌病害がほとんど発生していない農地を見出し、土壌を詳しく調べました。その結果、「Lysobacter(リソバクター)属細菌」という細菌が、有機肥料を与えることで著しく増える特徴を発見。この菌が、この畑を発病抑止土壌たらしめている鍵となる善玉菌だと考えられています。
そこで研究グループは、このL属細菌を発病抑止土壌から特定・抽出し、その「エサ」となる有機肥料、「すみか」となるバイオ炭と組み合わせた微生物製剤を開発。これを普通の農地に移植・定着させることで、病気に強い「発病抑止土壌」へと改良する技術体系の確立に取り組みます。これまでの試作品での実験では、約8割の農地でL属細菌を優勢な状態に定着させることに成功し、病気の原因となるカビの仲間を大きく減らせることも確認されています。
将来的には、農作物の収量アップや食料の安定供給、有機農業の拡大、CO2排出量の実質ゼロ化(バイオ炭の活用)といった社会課題の解決につなげることを目指します。また、水を大量に使う水田に代わり、畑で栽培できる「陸稲(りくとう)」への応用など、幅広い展開も視野に入れています。

産学連携による研究体制
本事業は、長浜バイオ大学の神波 誠治プロジェクト特任准教授および島本微生物工業株式会社を中心に、次のメンバーで構成される共同体により進められます。
- 事業管理機関:学校法人関西文理総合学園 長浜バイオ大学
- 主たる研究機関:島本微生物工業株式会社(発酵技術と有用微生物の応用に強みを持つ滋賀県内企業)
- 従たる研究機関:株式会社キャンディファーム(たねやグループで菓子原料となる農作物生産を手がける)
- 従たる研究機関:学校法人関西文理総合学園 長浜バイオ大学(バイオサイエンス学部)
さらに、株式会社たねや 執行役員の小玉 恵氏、東レエンジニアリング株式会社 サステナブル・エンジニアリング推進室長の井中 千草氏、本学バイオサイエンス学部 の石川 聖人准教授がアドバイザーとして参画します。
今秋からは、実際の農地に近い規模の試験圃場で実用化研究をスタートする予定です。本学は今後も、地域の企業や生産者と力を合わせながら、持続可能な農業の実現に向けた研究開発に取り組んでまいります。