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動物の健康に影響する共生細菌の多様性を高める環境要因が明らかに

長浜バイオ大学バイオサイエンス学部の倉林 敦准教授を含む13ヵ国1) 29研究機関からなる国際プロジェクトチームが、両生類の皮膚に共生している細菌について世界規模の解析を行い、どのような時間・空間的環境要因が、共生細菌の豊かさを生み出しているのかを解明しました。

動物と共生している微生物は、宿主の生命と健康の維持に不可欠なものです。しかし、どのような生物・非生物学的要因が、動物皮膚の微生物群落2の豊かさを規定しているのかについては理解が進んでいませんでした。今回、プロジェクトチームは、世界各地からおよそ200種の両生類2,300個体を収集し、その皮膚に存在する細菌多様性の地域パターンについて調査しました。さらにいくつかの統計学的解析で、生物的・非生物的要因が皮膚細菌群落とどのように相関しているかについて詳しく分析しました。その結果、両生類体表の細菌多様性は、温度に関連した要因と強い結びつきがあることがわかりました。特に、冬も暖かく年間気温差が少ない環境と比べ、冬寒く気温が不安定な環境において、より多様な皮膚細菌バイオーム3が見られることが明らかになりました。さらに、細菌増殖速度、休眠遺伝子、抗生物質合成遺伝子、細菌熱増殖最適条件などを考慮した両生類皮膚細菌の多様性パターン形成機構についての有力なモデルが提案されました。

本研究成果は、英国科学雑誌「Nature Ecology & Evolution」においてオンライン公開されました。

1) ドイツ・パナマ・アメリカ・コスタリカ・韓国・ポルトガル・ブラジル・デンマーク・日本・南アフリカ・カナダ・チリ・マダガスカル。
2) 生物群落:ある場所に存在し、互いに影響を与えている生物全体を指す。この論文では、ある両生類の皮膚に存在している細菌全種とその存在比率を指している。
3) バイオーム:生物群系。ある気候条件の地域で、安定して維持されている生物群落を指す。

【倉林 敦准教授のコメント】

共生微生物が、宿主動物の生命・健康維持に必要不可欠なものであることが明らかになるにつれ、それら微生物(マイクロバイオーム)の研究が生物学のトレンドの1つになりつつあります。しかし、野生環境において、どのような要因が共生微生物の多様性を生じさせているのか、という点については理解が進んでいませんでした。今回の研究では、グローバルな両生類調査に加え、詳細な統計学的解析を行うことで、動植物で見られるように単純に低緯度の熱帯地域で多様性が高いというわけではなく、冬寒く年間気温差が激しい地域ほど共生細菌の多様性が高いことを初めて示すことができました。今回の発見は基礎的なものですが、本研究の解析方法や得られた知見は、今後、有用共生微生物による健康促進(プロバイオティクス)や微生物による環境改善(バイオレメディエーション)などに役立つと期待されます。

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