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人類の課題に挑む最先端の研究

再生医療の未来を見据えて
iPS細胞を超える全能性幹細胞を

中村 肇伸 先生 アニマルバイオサイエンス学科

中村肇伸先生皮膚などの体細胞を初期化して、あらゆる組織や臓器になりうるiPS細胞が樹立され、再生医療の実現は遠い夢ではなくなりました。しかし、卵子と精子が受精を行い、体のすべての細胞になりうる全能性を再獲得する自然生殖に比べれば、決して効率的とはいえないのが現状です。
中村先生の研究室では、哺乳類の初期の発生過程において、受精卵が全能性を再獲得するメカニズムを解明し、完全な一個体を形成する能力を有したまま増殖可能な「全能性幹細胞」の樹立を目標に研究を行っています。近年では、初期胚から作製されるES細胞にごくわずかに含まれる全能性細胞集団の可視化に成功。さらに通常0.01%程度しかES細胞に存在しない全能性細胞を約20%にまで増加することにも成功しました。
また、受精後のエピジェネティック制御(塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現の制御)において、受精卵の精子由来のクロマチンに特異的なヒストン修飾の存在を明らかにしたうえで、この修飾がTet3とよばれる酵素による能動的な脱メチル化の開始に必要であることを発見。受精卵のリプログラミング(初期化)機構の一端を紐解くことで、再生医療の前進に貢献しようとしています。

次世代シーケンサーを駆使して
ゲノムレベルで生命進化の謎に迫る

小倉 淳 先生 コンピュータバイオサイエンス学科

小倉淳先生
生命現象の根幹をなすゲノム情報や発現遺伝子情報を超高速・低コストで解析しうる次世代シーケンサーの出現は、生命科学の研究に飛躍的な進展をもたらしました。小倉先生の研究室では、この次世代シーケンサーを活用し、膨大な遺伝情報から生命の進化や多様性に迫る研究を行っています。
中でも先生は、脊椎動物と同じ眼の構造と発達した脳を持ち、“海の霊長”とよばれるイカやタコといった頭足類に着目。頭足類の眼や脳神経系の発生メカニズムを明らかにすることで、劇的な進化を遂げた脊椎動物の眼や脳神経系の研究に役立てようとしています。実際にイカと脊椎動物のゲノムをコンピュータで比較解析したところ、眼の発生過程で最も重要な働きをもつ遺伝子PAX6が、複数のタンパク質をつくる機能を使い分けるのは、頭足類と脊椎動物だけであることを発見し、一見遠い存在のヒトとイカの進化にゲノムレベルで新たな共通項を見いだしました。最近では、様々な生物が環境に適応するために獲得した接着システムにも関心を抱き、海藻に付着しながら生活するヒメイカの接着分子で、生物由来の無毒な医療用接着剤の開発に尽力しようとしています。

細胞の分化や生死を人為的にコントロール
難治性疾患や生活習慣病に光明を

亀村 和生 先生 バイオサイエンス学科

亀村和生先生
私たちヒトの体は数十兆個の細胞から成り立ちますが、その細胞がどのように制御され、私たちの生命活動が維持されているのか、また、病気の原因となる細胞の状態を制御することで、治療や予防に役立てることはできないのかと考える「細胞制御学」が亀村先生の専門です。
なかでも先生は、哺乳類の発生に不可欠とされるタンパク質の翻訳後修飾の働きに注目し、細胞分化やがん化に至るメカニズムを解明しようとしています。これまでにも研究室に所属する学生とともに、翻訳後修飾を人為的にコントロールすることで、筋細胞や脂肪細胞への分化効率を操作できることを発見したほか、低下によって骨粗鬆症を招くという骨芽細胞の分化を促進する翻訳後修飾を発見し、この翻訳後修飾は骨を破壊する破骨細胞の分化を抑制するスイッチの役割も果たしていることを明らかにしました。
さらには、若年性がんのユーイング肉腫の原因タンパク質として同定されたEWSの機能を調節する翻訳後修飾に注目し、悪性度の高いがんに対抗しうる新たな分子標的治療薬の開発に貢献しようとしています。

細胞レベルで老化と寿命を研究
人類が夢見た永遠のテーマに挑む

向 由起夫 先生 バイオサイエンス学科

向由起夫先生
ヒトはなぜ年を取るのか。老化を遅らせ、寿命を延ばすことは可能なのか。この人類普遍のテーマに対して、ヒトの細胞によく似た出芽酵母をモデルに使い、細胞レベルで老化と寿命の研究を行うのが向先生の研究です。
出芽酵母はパンや酒の製造に使われるなど、とても身近な微生物ですが、娘細胞とよばれる芽を出して増殖を繰り返し、平均して25個の娘細胞を生んで母細胞の増殖がストップし、母細胞は死を迎えます。つまり平均寿命が25世代で、娘細胞を生むたびに母細胞が劣化する現象が“老化”です。向先生の研究室では、老化に伴い段階的に細胞内で変動する代謝物や遺伝子の転写産物を調べることで、寿命や老化に関わる遺伝子を見つけ出しています。このような研究から、ビタミンが欠乏すると細胞の老化が早まること、細胞内にポリリン酸が蓄積すると寿命が短くなることを発見しています。
また、地元・滋賀県に貢献する仕事として、琵琶湖の漁業や養殖業に深刻な被害をもたらすアユの感染症・冷水病に対するワクチンを開発しようとしています。現在はアユ冷水病菌の完全ゲノム配列を決定し、開発への大きな足掛かりにしています。2018年には梅の実から単離した酵母を使った酒を県内の酒蔵と共同開発・発売しました。

滋賀県のサンショウウオ類の保護と
先端DNA研究

齊藤 修 先生 アニマルバイオサイエンス学科

齊藤修先生
本学のある湖北地域は、特に自然豊かな地域です。春から初夏には琵琶湖から河川へナマズやアユが遡上し、夏にはホタルが舞い、特別天然記念物のオオサンショウウオも生息しています。
齊藤先生は、大学近くの田村山の麓に絶滅危惧種のカスミサンショウウオの繁殖地を見つけ、保護活動と遺伝系統の研究をしています。地域の方々と保護組織「田村山生き物ネットワーク」を立ち上げ、カスミサンショウウオを守る人工池を数年がかりで完成させ、第1回しが生物多様性大賞を受賞。滋賀県に5つの遺伝系統のカスミサンショウウオが生息していることを発見しています。
近年、京都の河川で日本のオオサンショウウオが中国のオオサンショウウオと交雑し、日本古来の種が絶滅の危機にあります。齊藤先生たちは、長浜の繁殖集団が日本在来の種であることを遺伝子判定で突き止め、滋賀県内の他地域のオオサンショウウオの生息状況を調べ、中国種の侵入を阻止しようと研究を進めています。
先生は、野外調査、水中のDNAを調べる環境DNA調査、ゲノムDNAの多様性研究を通して、豊かな湖北の自然を次世代に残すことに貢献したいと考えています。

コンピュータで自動分類を実現
タンパク質の未知の機能に迫る

白井 剛 先生 コンピュータバイオサイエンス学科

白井剛先生
タンパク質は生命科学において重要な意味を持つ物質であり、これなしでは現在の生物は生存できません。血液成分や抗体、酵素、コラーゲンなど様々な形態で生命活動を維持していますが、その働きは立体的な構造を形成して初めて理解できます。タンパク質の形がわかればその役割が把握でき、病気の原因究明や医薬品の設計に大きな手助けになるのです。
情報構造生物学を専門とする白井先生は、これまで膨大な時間と労力を費やして解析されてきたタンパク質の立体構造や他の分子との相互作用を、パーソナルコンピュータで完全自動分類する「タンパク質立体構造2次データベース構築システム(SIRD)」を開発。その有用性が認められ、政府が推進する「創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業」にも採択されました。
近年では、複製過程でエラーを起こしたミスマッチDNAと、ミスマッチDNAを特異的に切断する制限酵素Endo-MSの複合体を構造解析。修復されない場合はがんの原因にもなるというミスマッチDNAをEndo-MSが認識するメカニズムを解明し、将来のがん予防に役立てようとしています。

植物の自己防衛システムの解明で
環境問題や食糧難に立ち向かう

蔡 晃植 先生 バイオサイエンス学科

蔡晃植先生
動物と植物の決定的な違いとは、「自ら移動するのか、しないのか」ということです。そのために植物は、自らの置かれている環境情報を素早く読み取り、環境変化に適応する能力を獲得してきました。
蔡先生の研究室では、植物がどのようにして病原菌を認識し、自らの身を守る免疫システムを誘導するのか、また、温度や湿度などの環境情報をどのようにして認識し、細胞内に伝達するのかを解明することで応用や開発につながる多くの実績を残しています。
これまでの研究で、イネが病原細菌の鞭毛タンパク質やEF-Tuとよばれる病原細菌の伸長因子を特異的に認識し、免疫システムを誘導していることを世界で初めて発見。これら植物の免疫誘導システムとヒトを含めた哺乳類の自然免疫システムとは類似点が多いことから、生命の自己防衛の原点に迫る研究を進めています。
近年では地球環境問題や食糧難の解決を視野に入れ、植物の免疫と生育の両方を高めるタンパク質の研究や、過酷な凍結環境に耐えうる植物の研究を行うほか、希少な湖北地域の伝承野菜を復興し、地域産業の発展に貢献しようとするプロジェクトが、文部科学省の「平成29年度私立大学研究ブランディング事業」に採択されました。

人類の難病克服に光明をもたらす
未知のペプチドを解き明かす

向井 秀仁 先生 バイオサイエンス学科

向井秀仁先生
アミノ酸とアミノ酸が結合し、2個以上につながったものをペプチドと呼びますが、生命活動を維持するために、体の組織や細胞間で情報のやりとりを行う中心的な存在が生理活性ペプチドです。例えば、血糖値を下げるインスリン、胃酸の分泌を促すガストリンなど、“情報の運び屋”であるこれらの生理活性ペプチドの研究は、今後の医療や医薬品の開発に大きく貢献するものです。
向井先生の研究室では、体内でタンパク質が生合成・代謝される過程で生じる断片ペプチドに、病気やケガによる炎症時に働く好中球を活性化する機能があることを発見。これらの生理活性ペプチドを総称して「クリプタイド」と命名し、そのメカニズムを調べるために、クリプタイドの働きを阻害する拮抗阻害剤や特異的に機能を消去する中和抗体を創り出し、未知のペプチドの研究に役立てようとしています。
クリプタイドの働きを調べるうえで、拮抗阻害剤や中和抗体を創製し用いるという独創的なアプローチは国内外から高い評価を受け、現在では個体レベルでクリプタイドと病気の関連が明らかになる段階にまできています。それほど遠くない将来、長浜発の創薬を実現する日が来るでしょう。

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