長浜バイオ大学が誇る最先端の研究

細胞レベルで老化と寿命を研究
人類が夢見た永遠のテーマに挑む

向 由起夫先生 バイオサイエンス学科

向由起夫先生ヒトはなぜ年を取るのか。老化を遅らせ、寿命を延ばすことは可能なのか。この人類普遍のテーマに対して、ヒトの細胞に極めてよく似た出芽酵母をモデルに使い、細胞レベルで老化と寿命の研究を行うのが向先生の研究です。
出芽酵母はパンやお酒の製造に使われるなど、とても身近な微生物ですが、娘細胞とよばれる芽を出して増殖を繰り返し、平均して25個の娘細胞を生んで母細胞の増殖がストップし、母細胞は死を迎えます。つまり平均寿命が25世代で、娘細胞を生むたびに母細胞が劣化する現象が“老化”です。向先生の研究室では、老化にともない段階的に細胞内で変動する代謝物や遺伝子の転写産物を調べることで、寿命や老化に関わる遺伝子を見つけ出しています。このような研究から、ビタミンが欠乏すると細胞の老化が早まることを発見しています。
また、本学が拠点を置く滋賀県に貢献できる仕事として、琵琶湖の漁業や養殖業に深刻な被害をもたらすアユの冷水病に対するワクチンを開発しようとしています。冷水病とは低水温でアユの体に穴を開ける感染症で、またの名を“穴あき病”ともいわれます。現在はアユ冷水病菌の完全ゲノム配列を決定し、ワクチン開発への大きな足掛かりにしています。

頭足類と脊椎動物のゲノムを比較
眼の発生から進化の謎を解く

小倉 淳先生 コンピュータバイオサイエンス学科

小倉淳先生
膨大な視覚情報を処理できる眼の獲得は、私たちヒトの脳神経系に劇的な進化をもたらしました。そのためヒトは、自然界の頂点に立つ霊長とよばれていますが、実はタコやイカなどの頭足類も脊椎動物と同じカメラ眼や発達した脳をもち、“海の霊長”とよばれています。
小倉先生は、頭足類の眼や脳神経系の発生メカニズムを明らかにすることで、脊椎動物の眼や脳神経系進化の研究に役立てようとしています。実際にイカや脊椎動物のゲノム(すべての遺伝情報)をコンピュータで比較解析し、遺伝子の変化の過程や生物の特徴に関わる遺伝子を予測。さらに実験により遺伝子同士がどのように影響し合っているのかを分析し、生物の多様性や進化のメカニズムに迫ろうとしています。
そんななかで先生は、眼の発生過程で最も重要な遺伝子PAX6が、複数のタンパク質をつくる機能を使い分けるのは、頭足類と脊椎動物だけであることを発見しました。一見、遠い存在のようにも思えるヒトとイカですが、ゲノムレベルで比較解析することで生物進化の新たな側面を見出そうとしています。

生物発生のメカニズムを紐解き
より高次元の再生医療をめざす

中村 肇伸先生 アニマルバイオサイエンス学科

中村肇伸先生
皮膚などの体細胞を初期化して、あらゆる組織や臓器になりうるiPS細胞が樹立され、再生医療の実現は遠い夢ではなくなりました。しかし、卵子と精子が受精を行い、体のすべての細胞になりうる全能性を再獲得する自然生殖に比べれば、決して効率的とはいえないのが現実です。
中村先生の研究室では、哺乳類の初期の発生過程において、受精卵が全能性を再獲得するメカニズムを解明し、より高品質なiPS細胞を効率よく量産する方法を確立しようとしています。近年の共同研究では、卵細胞で活発に働くDppa3という遺伝子を用い、従来のiPS細胞よりも良質の分化能(あらゆる細胞に分化できる能力)を持つiPS細胞の作製にも成功しています。
また、受精後のエピジェネティック制御(塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現の制御)に関わるStella遺伝子を解析するなかで、DNAの低メチル化状態が悪性腫瘍の副次的な現象ではなく、がんそのものを招く要因にもなることを明らかにしています。生命の誕生を分子レベルで解明する研究は、今日の再生医療に貢献する一方で、細胞のがん化の過程に迫ろうとしています。

光合成のメカニズムを応用し地球にやさしい太陽電池を

佐々木 真一先生 バイオサイエンス学科

佐々木真一先生
植物や藻類などが行う光合成は、光エネルギーを利用して水と二酸化炭素から炭水化物を合成するクリーンな化学反応です。その初期過程においては、クロロフィルを主とする色素分子が太陽光を吸収し、励起エネルギーが効率よく分子間を伝わって反応中心に運ばれることから、光合成は光を電気エネルギーに変える太陽電池の天然モデルといわれています。
佐々木先生は、天然色素である(バクテリオ)クロロフィル類を原料として、太陽電池に応用できる機能性色素の開発に取り組んでいます。具体的には、有機合成反応を駆使して天然色素の構造を少しずつ変えながら、幅広い波長領域の光を吸収しつつ電極に電子を注入できる分子を設計し、色素増感太陽電池へ応用できる誘導体の合成に成功しています。これまでに約10%の光電変換効率を達成できました。
一方、色素溶液を塗布するだけで秩序だった色素集積体が構築できる「化学的にプログラムされた」クロロフィル誘導体の開発にも成功しており、有機薄膜太陽電池や有機無機ハイブリッド型電池への応用を進めています。今後、光合成色素を原料とした太陽電池の研究が進めば、環境に負荷をかけないクリーンなエネルギー変換システムの実現も夢ではありません。

細胞の分化や生死を人為的にコントロール
難治性疾患や生活習慣病に光明を

亀村 和生先生 バイオサイエンス学科

永井信夫先生
私たちヒトの体は数十兆個の細胞から成り立ちますが、その細胞がどのように制御され、私たちの生命活動が維持されているのか、また、病気の原因となる細胞の状態を制御することで、治療や予防に役立てることはできないのかと考える「細胞制御学」が亀村先生の専門です。
なかでも先生は、哺乳類の発生に不可欠とされるタンパク質の翻訳後修飾の働きに注目し、細胞分化やがん化に至るメカニズムを解明しようとしています。
これまでにも研究室に所属する学生とともに、翻訳後修飾を人為的にコントロールすることで、筋細胞や脂肪細胞への分化効率を操作できることを発見したほか、低下によって骨粗鬆症を招くという骨芽細胞の分化を促進する翻訳後修飾を発見し、この翻訳後修飾は骨を破壊する破骨細胞の分化を抑制するスイッチの役割も果たしていることを明らかにしました。さらには、若年性がんのユーイング肉腫の原因タンパク質として同定されたEWSの機能を調節する翻訳後修飾に注目し、悪性度の高いがんに対抗しうる新たな分子標的治療薬の開発に貢献しようとしています

コンピュータで自動分類を実現
タンパク質の未知の機能に迫る

白井 剛先生 コンピュータバイオサイエンス学科

白井剛先生
タンパク質は生命科学において重要な意味を持つ物質であり、これなしでは現在の生物は生存できません。
血液成分や抗体、酵素、コラーゲンなどさまざまな形態で生命活動を維持していますが、その働きは立体的な構造を形成して初めて理解できます。いわばタンパク質の形がわかればその役割が把握でき、病気の原因究明や医薬品の設計に大きな手助けになるのです。情報構造生物学を専門とする白井先生は、これまで膨大な時間と労力を費やして解析されてきたタンパク質の立体構造や他の分子との相互作用を、パーソナルコンピュータで完全自動分類する「タンパク質立体構造2次データベース構築システム(SIRD)」を開発。その有用性が認められ、政府が推進する「創薬等支援技術基盤プラットフォーム業」にも採択されました。
近年では、複製過程でエラーを起こしたミスマッチDNAと、ミスマッチDNAを特異的に切断する制限酵素Endo-MSの複合体を構造解析。修復されない場合はがんの原因にもなるというミスマッチDNAをEndo-MSが認識するメカニズムを解明し、将来のがん予防に役立てようとしています。

化学の力で生命現象を解明し病気に立ち向かう

長谷川 慎先生 バイオサイエンス学科

長谷川慎先生
生命の営みは化学反応の連鎖であり、化学を使って生命現象を解き明かすことはもちろん、制御することさえ可能です。このケミカルバイオロジーとよばれる化学と生物学の境界分野で、長谷川先生は日夜研究に取り組んでいます。先生の現在の研究は「抗がん剤の探索」と「病原体の検出装置の開発」です。
そもそも抗がん剤とは、がん増殖の原因となるタンパク質の働きを調整する物質です。先生は、生体内で興味深い作用を示す新しい抗がん剤候補物質を探し出したり、物質そのものをデザインしなおすことで、新しい抗がん剤の創出につなげたいと考えています。
また、ウイルス感染症の拡散を防ぐため、病原体を特異的に吸着する蛍光試薬とレーザー光を利用して高感度かつ迅速にウイルスを検出する装置や、メッシュ状の特殊な金属薄膜で細胞や微生物をふるいにかけて分離ののち赤外線を照射して簡単に検出するバイオセンサーを開発。これらの研究開発は国の機関である科学技術振興機構の支援を受け、バイオ関連企業とともに実用化をめざすなど、医療や防疫に貢献しようとしています。
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