この間の教員の研究成果「大学案内2015」紹介分

ドラッグデザインで、がん細胞の増殖を抑える化合物を開発

バイオサイエンス学科 水上民夫先生

私たち人類にとって最も脅威となっている病である"がん"。1980年代にはヒトがん遺伝子やがん抑制遺伝子が発見され、がんが遺伝子疾患であることが明らかになりました。また、近年では遺伝子の発現を調節するエピジェネティクスの異常が、多くのがんの発生原因として広く認知されるようになりました。

エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列が変化していないにも関わらず、環境などの後天的な要因で決定される遺伝的な仕組みのことで、がんの場合はDNAと結合するヒストンというタンパク質にメチル基がくっついたり外れたりすることで、がんを引き起こすスイッチがオンやオフになるというものです。

水上先生は、ヒストンからメチル基を外す酵素の中で、がんの発生原因であるLSD1を強く阻害し、がん細胞の増殖を抑える化合物を、ドラッグデザインというアプローチで、世界に先駆け創りだしました。現在では、最初に創りだした化合物よりさらに強力な阻害剤の開発にも成功しています。

水上民夫先生

病を防ぐ細胞の自己分解システム ─ オートファジーの謎を解明

アニマルバイオサイエンス学科 山本章嗣先生

山本章嗣先生

生命活動を維持するために、とても重要な役割を果たしているオートファジーの解明が山本先生の研究課題です。オートファジーとは、細胞内で不要になったタンパク質や病原菌を分解するシステムで、細胞が飢餓に陥った場合には、自ら細胞の一部を消化して栄養素を確保します。

また、異常タンパク質や細胞内に感染した病原菌などを分解することから、アルツハイマー病などの脳疾患、心不全、糖尿病、溶連菌などによる感染症、がんといった病気を防いでいることが近年明らかになりました。さらには、オートファジーがエイズウイルスの増殖や急性膵炎の発症に関与することも明らかになり、これらの深刻な病を理解する上でもその解明が重要であることが示されました。

このように、生物が獲得した優秀な自浄作用であるオートファジーの研究のみならず、山本先生はコンピュータと共に今日のバイオ研究に不可欠な電子顕微鏡の技術開発の第一人者であり、組織や細胞をナノスケールで解析するための電子顕微鏡技術の発展に貢献しています。

新しく発見された生理活性ペプチドが未来の医療の光明に

バイオサイエンス学科 向井秀仁先生

血圧や血糖、食欲や感情に至るまで、あらゆる生命現象にはからだの組織や細胞間で互いに多くの情報のやりとりが不可欠です。その"情報の運び屋"こそが生理活性ペプチドで、代表的なものに糖尿病の薬として知られるインスリンやグルカゴン様ペプチド-1、前立腺がんに対する制がん剤である黄体形成ホルモン放出ホルモン関連ペプチドなど、創薬やサプリメントの材料として大いに注目されています。

向井先生の研究室では、白血球の一種である好中球を活性化する50種類以上の新しい生理活性ペプチドを発見し、これらのペプチドを総称して「クリプタイド」と命名しました。さらにそのメカニズムを解明することで、異なる多くのクリプタイドが連携し、1つの細胞をコントロールしていることが明らかになりました。

今後、クリプタイドの情報伝達機構や生理機能の解明が進めば、糖尿病やリウマチ、心筋梗塞などの病気を治す新薬や、原因不明の病気に対する画期的な治療法の開発につながると期待されています。

向井秀仁先生

様々な環境ストレスをやわらげる色素細胞の可能性を追求

バイオサイエンス学科 山本博章先生

山本博章先生

私たちの生物学的な個性の一つである皮膚や毛の色を決める色素細胞は、近年の研究で視覚や聴覚にも必須であることが明らかになりました。

私たちヒトの色素細胞は、変温動物とは違って、メラニン合成を行うメラニン色素細胞のみですが、その発生経路の違いで2種類に分類されます。一方は発生中の脳に由来する網膜色素上皮細胞で、視覚に必須の働きをし、他方は脊椎動物特異的な胚の細胞群である神経冠細胞に由来するメラノサイトで、聴覚に必須です。山本先生のグループは、脳の形成に不可欠な遺伝子Otx2が、発生中の眼において網膜色素上皮細胞と神経網膜細胞の分化にも重要な役割を果たしていることを発見しました。

また最近では、ハツカネズミの内耳色素細胞に酸化ストレスを軽減する遺伝子が大量に発現することを明らかにしました。先生は色素細胞が皮膚における紫外線防御だけでなく、すべてのストレスを吸収し、緩和するように進化してきたのではないかと科学的に「妄想」しているそうです。

ページの先頭へ