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2018年度入学式での蔡晃植学長の式辞

2018年4月1日に挙行した、長浜バイオ大学第16期生・長浜バイオ大学大学院第12期生の入学式での、蔡晃植学長の式辞を紹介します。

式 辞

湖北・長浜の地にも桜の花の便りが届き、春の暖かさを感じることができるようになりました。私は、2018年度4月の入学式にあたり、新入生の皆様、ならびにご列席のご家族・ご関係者の皆様に対し、本学教職員、在校生を代表して、心よりのお祝いと歓迎のご挨拶を申し上げます。また、多くのご来賓の皆様や本学ゆかりの皆様のご臨席を賜りましたことを心より感謝申し上げます。

本日、めでたく長浜バイオ大学に入学されたバイオサイエンス学部生は、バイオサイエンス学科170名、アニマルバイオサイエンス学科58名、コンピュータバイオサイエンス学科32名、臨床検査学プログラム22名の総計282名であり、本学大学院におきましては、バイオサイエンス研究科博士課程前期課程30名、博士課程後期課程5名となります。また、バイオサイエンス学部に入学された学生の中には海外からの留学生7名も含まれており、多くの優秀で意欲にあふれた若者が、日本全国、世界各地から湖北、長浜の地に集ってくださったことを大変嬉しく思います。

長浜バイオ大学は、生命科学の時代と言われている21世紀において、時代を切り開く視野と創造性、高いバイオサイエンスの専門知識と技術力を身に付けた人材を養成することと、世界でもトップレベルのバイオサイエンス研究を行い、学術文化の発展に貢献すること、および、地域社会の発展や産業の振興、国際交流の発展に貢献することを目的として2003年に開学しました。現在、長浜バイオ本学は、生命科学の全ての分野を備えたバイオの総合大学として発展すると共に、社会に貢献しうるバイオサイエンスの新知見を長浜の地から発信する知の拠点としても発展しました。これは、実際に、2014年度に科学論文の質を評価しうる論文の引用数が、国立、公立、私立を含めた 全国782校中で3位、生命科学分野において最も権威のある論文とされている「ネイチャー」への掲載率が全国の大学で9位という数字でも証明されております。この科学技術研究における成果は、学生数1200人程度の私立大学としては、驚異的なことであり、本学の優秀な教員組織、研究環境の整備で協力してくれる法人組織、さらに意欲あふれた学生がそろっているからこそ成しえたものです。

さて、新入生の皆様は、これから幅広い教養、語学、コミュニケーション法等と共に、最先端の科学技術について学ぶことになります。人類の歴史を科学技術の点から見ると、大きく4つの時代に分けることができます。 人類誕生と同時に始まった狩猟採集時代が数百万年、 その後、数千年の農耕時代があり、産業革命を開始とする工業化時代が200年、現在の情報化時代がほんの数十年となります。ところが今、私たちは人類が経験したことにない新たな時代の始まりにいます。現在は、第四次産業革命の時代とも呼ばれており、ディープラーニングと呼ばれる人工知能やビッグデータ、高度ロボット化などによって社会、経済の構造は勿論のこと、知識や価値の創造プロセスまでもが大きく変化しようとしています。今後は、計算システムが人間の思考を補助し、ロボットシステムが作業を助け、デジタル神経系がバーチャルリアリティーの世界へと誘うことで、人間は自身が持つ本来の感覚をより広げることになり、人類の文化として継承されてきた概念や価値観は根底から変化することになるでしょう。実際に、ジョンズホプキンス大学で、両腕を失った人に、その人の神経系の信号でコントロールできる義手を開発することに成功しており、これまで不可能とされていた人間が自身の脳と神経系を用いて直接コンピュータとコミュニケーションを取るということが、可能となってきております。このような社会構造と価値観の大変革を伴うデジタルイノベーションがいつ訪れるのかということは正確には予測できませんが、2020年には人間の脳と同等の計算能力を持つコンピュータが10万円で買えるようになり、2045年頃には全人類の脳と同等の計算能力を持つコンピュータがやはり10万円以下で手に入るようになることを考えると、そう遠いことではないでしょう。

19世紀のドイツの政治家であり、ドイツ統一や全国民加入型の社会保険制度を構築したオットー・フォン・ビスマルクは、「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」という有名な言葉を残しています。時代が大きく変動する今この時代において我々がとるべき行動規範は150年前の明治維新から学ぶことができます。当時の薩摩藩は、江戸から遠く離れている現在の鹿児島県に中心を置いていたにも関わらず、明治維新とそれを推し進める原動力となった幕末において、中心的な役割をなしました。薩摩藩は、1853年の黒船来航より前に、英国海軍が有していた当時では最高水準の世界地図を入手しており、今後は列国の襲来によって時代が大きく変動すると予想しておりました。そこで、大変動する時代に対応するためには、科学技術の水準が欧米と肩をならべる必要があると考え、オランダの技術書一冊を参考に鉄の精錬に使う反射炉を作り、質のよい鉄を生産すると共に、新しい時代の科学技術を担うことができる、高い知性と知識、技術を身につけた、人材の育成に力を入れました。このような歴史の教訓は、新しい時代に対応するためには、これまでの自分の経験と価値観だけで行動するのではなく、新しい時代を予測し、そこで活躍するためには何が必要なのかを自分で考え無ければいけないことを物語っています。長浜バイオ大学は、新入生の皆様が来たるべき新しい時代に適応し、活躍することが可能な人材に育つために必要な教育システムと教育施設、教育スタッフを整えております。新入生の皆様には、将来、自分はどのような分野で、またどのような立場で、新しい社会において活躍していくのかを早く方向付けして、それに即した中長期の計画をしっかりと立てて、勉学や研究に励んでください。

もっとも、これら教育環境を十分に活用し、自分を磨いていくことで有能な人間に育つかどうかは、基本的に学生の自主的な選択に任されています。大学では、大学でどのように学ぶか、または学ばないかという選択も含めて学生個人に任されております。しかし、このような大学での自由は、学生個人の大きな責任の上にのみ成り立つということを新入生の皆様は忘れないでいただきたいと思います。大学での学びは、高校までとは全く異なります。高校では、教科書に沿って勉強し、問題の正解を習い、この問題の理解度をテストで確認しています。一方、大学では、高いレベルの知識と教養を習得すると共に、自分で課題を見つけ、回答を模索したり、想像したりします。新入生の皆さんは、これまでは、すべての問題に正解があるという前提で勉強してきたと思います。しかし、皆様の未来には予想できない世界が待っているのと同じように、大学では答えが用意されていない問いについても対応しなければいけません。学部新入生の皆様は、これまでの家族・社会に守られながら学校教育を受けてきた「生徒」から、自ら学び、学業を修め、答えが用意されていない問いに取り組む「学生」へと脱皮、成長してください。

また、本日大学院に入学された学生諸君にも一言述べさせて頂きます。大学院での学びは、学部の時とは異なっております。学部における学びは多くが受動的であるのに対し、大学院での学びはすべて能動的となります。大学院においては、問題を整理しその解決法を考え、それを実践し、その結果を正確に理解すると共に、他の人と論理的な議論を行うことが必要となります。さらに、この議論の中から問題点が見つかったら、それを解決するための方策を考え、それを実践するというプロセスを繰り返すことになります。これは、現在、企業などでの業務を行うときに必要とされるPDCAサイクルに他なりません。PDCAサイクルとは、Plan計画、Do実行、Check評価、Act改善をそれぞれ意味しており、事業活動や管理業務、その他様々な仕事の進め方において基本とされています。すなわち、Planで従来の実績や将来の予測などを基にして業務計画を作成し、Doで計画に沿って業務を行い、Checkで業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価し、Actで実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をするということです。また、この4段階を順次行って1周したら、最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように1周ごとに各段階のレベルを向上させて、継続的に業務を改善してきます。すなわち、大学院での研究活動を能動的に進めることにより自然とPDCAサイクルを意識した仕事の進め方が身につきます。PDCAの概念は、現在の会社や事業所においては基本的な概念であるため、大学院での研究を能動的に進めた学生は、将来バイオサイエンス分野以外の職に就いたとしても、有能な人材として評価されることになるでしょう。是非、能動的なPDCAを意識した研究と学びを実践することにより、新しい社会においてリーダーとして力を発揮できる人材に育ってくれることを切に願っております。

多くの学部新入生の皆さまにとっては、これから始まる学部生としての4年間は、人生において、最も自由に学問や芸術・スポーツなどに取り組み、一生の宝となる貴重な人間関係を構築することのできる最後の機会となります。また、大学院に入学された皆様においては、教科書に掲載される知識を発見、解明していく期間であり、新たな学問の知の財産を人類の幸福のために生かす上での貴重な研究中心の生活になると思います。

新入生の皆様にとってこのように貴重な4年間、または大学院期間を長浜バイオ大学は全力でサポート致します。この貴重な期間が皆さんにとって実り多いものとなることを祈念して、私からの式辞とさせていただきます。

皆さん、ご入学、おめでとうございます。

     2018年4月1日  長浜バイオ大学 学長 蔡 晃植

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