研究科紹介
設置趣旨

21世紀は、あらゆる分野において新しい知識・情報・科学技術が活動の基盤として重要性 が増す「知識基盤社会(knowledge-based society)」の時代です。「知識基盤社会」へ移行するために、とりわけ、大学院の基盤を強化し、『科学技術創造立国』の形成に資する優れた人材を養 成することが緊急かつ最も重要な課題となっています。
大学院における人材養成機能を強化するために、大学院博士前期(修士)・後期(博士)両課程における教育課程の組織的展開の強化─すなわち大学院教育の実質化を図って「魅力ある教育」を実践していくことが、これからの科学技術社会において求められます。
こうした社会からの要請や期待に応え、未来を切り拓く人材を養成し、バイオサイエンス・ バイオテクノロジー分野での研究成果の産業化を促進し、地域の発展並びに持続可能な社会の形成に寄与することを目的として、本学は、大学院バイオサイエン ス研究科バイオサイエンス専攻(博士課程前期課程及び後期課程)を2007年4月に設置しました。
人材育成の目標

バイオの知識と技術にビジネスマインドを兼ね備えた高度バイオ研究・技術者の養成
産業界で研究・開発に従事する人の多くが大学院修士課程修了者であるなど、大学院の役割 は、高度研究者の養成だけでなく、専門職業人材の養成へも広がっています。博士課程前期課程では、現実社会に対応した考え方・捉え方ができるビジネスマイ ンドをもちながら、情報技術・環境科学等の高度な専門的技術知識をもって、社会で幅広く活躍・貢献できる専門職業人材を養成します。特に自治体や民間製造 業の研究所などでは、これらの力量をもつ人材に対する要望が強くなっています。
博士課程後期課程では、創造性豊かな優れた研究・開発能力をもち、産官学を通じたあらゆる研究・教育機関の中核を担う研究者等を養成します。前期課程で研究した内容をより深く・高度に追究し、自立した研究者を養成・支援する体系的教育課程を編成します。
バイオサイエンス専攻 教育課程
博士課程前期課程
3つの先端的研究領域を設置して、バイオインフォマティクスとバイオサイエンス・バイオテクノロジーの諸分野との融合を目指して実践することを特色としています。
入学時に確定する所属領域において、領域専攻科目を履修するとともに、他領域科目および領域共通である「バイオ・ビジネス共通科目」、「インターンシップ」を通じ、幅広く身につける教育課程としています。
バイオ情報科学技術領域
ゲノム情報とその発現により形成されるプロテオームの情報生物学・分子生物学・タンパク質工学を用いた解析技術について研究・教育を行います。
遺伝子配列からの機能予測とプロテオームの動態との統合は、ポストゲノミクスの重要な課 題です。これを達成するためには、大量情報を処理する情報技術と実験技術を有機的に併せ持つことが必要となります。そこで、現在個別の階層として取り扱わ れる分野であるバイオインフォマティクスによる解析と、機能・構造予測、実験手法による分子機能及び構造解析、さらに個々の分子の役割と挙動の解析技術を 縦断的に理解し応用できる人材育成を目指し、ゲノム情報科学特論・プロテオミクス特論等によりその基礎となる知識と実験技術を教員が機能的に協力・分担す る形で教育を実践し、生命現象を俯瞰的に捉えた解析と応用に対応できる人材の育成をめざします。
院生が語る
安田 ゆかりさん (博士課程前期課程2回生)

プロテアソームと呼ばれるたんぱく質の 複合体は、他のたんぱく質を分解すること で、細胞周期の調節や増殖因子の発現制御 など重要な役割を細胞内で担っています。 私はその阻害剤の開発を行っており、これまでに合成化学を専門とする外部の研究者 と共同で、既存の阻害剤よりも合成が容易 で新しい構造を有する阻害化合物を見出し ました。このような化学物質は、抗がん剤 として利用できることが知られています。
私は、化合物の阻害効果の検証をするた めに、細胞内のたんぱく質をウエスタンブ ロティング解析したり、蛍光顕微鏡で観察 を行いました。また、私の所属する研究室 により独自に開発された蛍光分析装置を用 いて、阻害効果を検証するための新しい評 価系を構築しようとしています。さらに、 コンピュータを用いたタンパク質モデリングにより、プロテアソームと阻害化合物が どのように作用しているのかを予測しよう と試みています。 この技術領域では、バイオのみならず化 学分析や情報科学などの幅広い分野の指 導者や研究に必要な設備が充実しているた め、複合的なアプローチにより研究を進めていくことができます。
バイオ機能科学技術領域
生命の不思議な現象を、主に機能面から理解し、それをバイオ技術として生かすことができる教育・研究を行います。そのために、分子・細胞・高次生体の階層レベルにおける専門的な取り組みを行います。
分子レベルでは、生命機能を司る生体分子を遺伝子工学の技術を用いて改変し、新しい機能 を持つ生体分子の創出を目指す人材を、また、細胞レベルでは、外界からのシグナルを細胞内機能発現に結びつける機構や、高度に分化した機能を持つ細胞内各 種オルガネラの機能を、細胞工学と超微細構造解析技術を用いて解く人材を、さらに、個体レベルでは、神経系などの高次生体機能を、情報伝達系、翻訳後修飾 系などの視点から理解し、病態解明と治療・予防につなげる工夫ができる研究者の育成を実践し、周辺領域の現状をも広く見渡すことができる人材の育成をめざ します。
院生が語る
小笠原 裕太さん (博士課程前期課程2回生)

山本研は主にオートファジーを中心とし た研究、そして電子顕微鏡を用いた形態学 的アプローチを得意とする研究室です。
オートファジーは電子顕微鏡によって初 めて発見され、がんや神経変性疾患などに 関わる重要な生命現象です。私は昨年新規 オートファジー阻害剤を発見しましたが、 この阻害剤は既存のものとは全く異なる作 用機序でオートファジーを抑制することが 分かっています。この阻害剤の標的を同定 しオートファジーの新規分子メカニズムを 明らかにすることが現在の研究目的です。 また、長浜バイオ大学ならではの優位点 として、他分野の研究室との連携がしやすいことがあります。本学は同じ棟内に様々 な分野の研究室が存在しており、分野を超 えたディスカッションを日常的に行うこと 細胞機能学 ができます。実際、私自身の研究は、山本研の細胞生物学と水上研の創薬技術、そしてバイオインフォマティックスから成る非常にユニークな研究となっていま す。分子生物学、動物生理学 の分野を超えた研究が出来ることか長浜バイオ大学の強みです。
バイオ環境科学技術領域
生体物質の構造と生体反応の分子メカニズムを基礎とした環境科学領域の教育・研究を行います。
環境から化学エネルギーを得て生活する微生物の環境適応過程や、生物の細胞がさまざまな環境情報を 認識し、情報伝達・細胞応答する過程を分子生物学・生化学・有機化学の手法で解析します。また、生物は環境中で、それぞれの構成種固有様式で影響し合いつ つ生殖・発生・世代交番を遂げていますが、こうした生物群集における環境との相互作用及び種間相互作用の分子的実体と作用メカニズムを、分子生物学、有機 化学、生化学、細胞生物学の手法を用いて解析します。
このような解析を通じて、環境に配慮した有用生物の利用や物質生産技術の開発や、それらの成果を基盤として、生態系保全、環境改善の方途を拓く能力を有する人材の育成をめざします。
院生が語る
吉田 裕貴さん (博士課程前期課程2回生)

バイオ環境科学技術領域では、色素細 胞の発生と機能発現機構、環境ストレス緩 和、環境分子生態学、機器分析化学、天然 物化学、細胞間情報学、植物生理学、植物 病理学、分子遺伝学、環境微生物学、環境分子応答学、生殖生理学、内分泌学などの 様々な分野についての研究を行っています
。私の研究テーマはイネ褐条病細菌Aci- dovoraxavenaeの病徴因子の機能解析 と病徴形成の分子機構を明らかにする研究を行っています。この細菌による褐条病は まだ小さな苗の時に限って特に箱育苗およ び畑苗代で発生しほとんどの幼苗が腐敗枯 死してしまいます。また、このような植物病原細菌による病気により、年間1割以上の作物が失われていると推定されています。 しかし、植物病原細菌による病気に対する 農薬などはまだできていないのが現状です。 したがって、この細菌による病徴形成の分 子機構の解明が、病害抵抗性のイネの作 出に繋がり食料増産に貢献できると考えています。
バイオ・ビジネス共通科目
所属領域に偏ることなくビジネスマインドを兼ね備えた広く産業界等で役立つ知識を吸収し、それらを 専門研究に効果的に役立てること、また、生命科学者としての倫理、果たさなければならない社会的役割・責任等を尊ぶ良識を大学院学生としての相応しいレベ ルで確立することを目的としています。
インターンシップ
バイオサイエンス・バイオテクノロジー分野その他の関連分野の企業・研究機関、官公庁等の機関と連携し、これまで習得してきた 高度専門知識と様々な課題等を結びつけ、自らの専門的力量を高度化し、研究分野を深め、職業の実像をつかみながら、将来の進路選択として確かな職業観・社 会観を身につけることを目的としています。
博士課程後期課程
バイオ科学技術研究領域
バイオインフォマティクスとバイオサイエンス・バイオテクノロジーの諸分野を融合した相互 の教育・研究に重点をおき、生命現象の普遍性原理の探究と人類社会の進歩・発展に貢献する研究者の育成を目的とします。そのために、バイオ科学の根幹をな す核酸、タンパク質などの生体機能分子とその集合体システムを多面的に習得したうえで、細胞、個体、生態システムなど、さまざまな生物階層における重要な 生物学的諸問題の基礎研究とその教育を推進するとともに、戦略性と創造性に富む高度な専門技術能力の涵養により当該領域における優れた研究者の育成、ま た、膨大な生命情報を活用し、人類の福祉に役立つバイオ技術を開発することのできる有為な人材の育成をめざします。
なお、所属研 究室における研究と研究指導教員からの指導のみだけではなく、研究科に所属する教員のリレー講義形式による講義を実施し、関連領域の知識を広げて高度な研究と博士論文執筆へつなげていくことを目的とし、より効果的な研究指導を目指します。



院生が語る
平子 暁さん (博士課程後期課程3回生)

私は「マルチドメインタンパク質の立体 構造推定法の開発」というテーマで研究を おこなっています。生物ゲノムにおける半 分以上の遺伝子が、複数のドメインからな るたんぱく質(マルチドメインタンパク質) をコードしています。たんぱく質の詳細な 生化学機能を解明するには、その立体構造 の情報が非常に重要になります。マルチド メインタンパク質は、立体構造を実験的に 解析することが難しい場合が多く、バイオ インフォマティクスの技術を用いて立体構 造の推定をしようと日々研究に取り組んで います。 バイオサイエンスと一口にいってもその 分野は幅広く、個人やその研究室だけでは、 専門と離れた研究動向を把握しきれません。
本大学院では定期的に開催される学内セミ ナーを中心に、様々な研究分野の最新の研 究動向を聞く機会が多くあります。また、 複数指導教員の制度などもあって、所属す る研究室以外の先生と接する機会も非常に 多く、研究に関することに限らずコミュニ ケーションをとる事ができます。自分の専 門分野以外の方からの意見を日常的にいた だけるのは、本大学院のひとつの特徴であ り利点だと思います。


