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植物における葉酸の働きを解明し、デンプンを増産する技術の開発をめざす

林 誠教授(バイオサイエンス学科):中央
山本 沙季さん(大学院博士課程前期課程1年):右
中川 太郎助手(バイオサイエンス学科):左

本学バイオサイエンス学科の林 誠教授、山本沙季さん(大学院博士課程前期課程1年)、中川太郎助手らの研究グループは、葉酸が植物におけるデンプン蓄積を抑制していることを発見しました。この研究成果は日本植物生理学会の国際誌『Plant & Cell Physiology (2017) 58,』(電子版)に掲載されました。

食糧やバイオ燃料などとして利用価値の高いデンプンは光合成により作られたブドウ糖をいくつもつなげたもので、種子や塊根、塊茎などの細胞内に存在するアミロプラストに蓄積しています。アミロプラストはプラスチドと呼ばれる細胞内小器官の一種です。プラスチドは全ての植物細胞に存在していますが、これまでなぜアミロプラスト以外のプラスチドがデンプンを蓄積しないのか分かっていませんでした。

今回林教授らは、プラスチドの一種であるエチオプラストにデンプンが蓄積するシロイヌナズナの変異体を得ることに成功しました。この変異体のプラスチドは、葉酸を合成する酵素を欠損していました。葉酸は植物が合成する化合物でがん治療にも応用されるなどヒトにも関わりの深い物質ですが、葉酸が植物細胞の中でどのような働きをしているのかはほとんど分かっていませんでした。今回の研究で、プラスチド内に存在する葉酸がATPを新たに作る機構を抑制していることが明らかになりました。そのため、エチオプラストなどはATPが不足し、デンプン合成の前駆体であるADP-グルコースを合成できないと考えられます。この研究成果を応用することで、植物によるデンプンの増産を可能にする新しい技術が開発できるものと期待されます。